教育講演

セッション:教育講演(2)
日時:9月21日 10:35-11:05
場所:国際会議室
司会:森田潔 (岡山大学医学部麻酔・蘇生学教室)

最近話題の人工血管

東京女子医科大学 心臓血管外科
○冨澤康子
 最近の人工血管に関する話題では、1)患者自身の細胞を吸収性ポリマーの管の上で培養した人工血管、2)細胞治療を応用した人工血管、3)体外で三層構造を作った培養人工血管、4)ステントグラフト、の4種類があげられる。1)および2)はすでに臨床応用され、3)は近い将来利用されることが期待されている。4)は侵襲が少ない治療法として注目されたものの問題点も多く存在することが最近、明らかになっている。
【患者自身の細胞を吸収性ポリマーの管の上で培養した人工血管】
患者の成長と共に成長する人工血管あるいはパッチ材料が長い間望まれてきた。吸収性ポリマーが吸収された後には異物を残さず、患者自身の細胞を用いるために拒絶反応がないといった特徴を持つ。先天性心疾患の患者用にin vitroで肺動脈を作成し、用いたところ良好な結果を示した。
【三層構造をもつようにin vitroで培養した人工血管】
1999年に紹介されたが、当時は究極の人工血管であると思われた。物理的な刺激を加えるためにBioreactorを用いて拍動下に培養するが、至適な厚さを得るには8週間もかかる。足場の種類、培養条件を変化させて至適条件を求めているが、実用化にはまだ時間がかかりそうである。
【細胞治療を応用した人工血管】
骨髄組織および細胞を利用した血管新生治療が現在臨床にて試みられているが、それより前に「機能を持つ人工血管」として紹介された。人工血管壁に骨髄組織を播種した人工血管では造血機能を示したが、早期の人工血管の内皮細胞による内面被覆に骨髄組織は大いに役立った。
【ステントグラフト】
動脈瘤をカテーテルで治療できたらということで登場したステントグラフトの中期成績が報告された。満足できる成績も多いが、重篤な副作用には血管損傷、瘤破裂、endoleak, 移動、不具合にはメタルフレームの破損、糸の断裂、布地の断裂等が報告されている。
 講演では麻酔科の先生方に興味を持っていただけるように、最近話題の4種類の人工血管を中心に、基礎及び臨床の情報を盛り込みながら、古典的な人工血管から組織工学を用いた最先端の人工血管までを解説できたら幸いである。