教育講演

セッション:教育講演(3)
日時:9月21日 11:05-12:00
場所:国際会議室
司会:福田悟 (福井医科大学麻酔・蘇生学教室)

文献レビュー -今年のテーマはcoronary-

大阪大学大学院 医学系研究科 生体調節医学(麻酔科学)
○林 行雄
例年のごとく昨年の10月号よりの心臓麻酔に関連する文献を取り上げてレビューしたい。本年度は例年に比べればCABGを対象とした論文が目立つ。そこでレビューのテーマをcoronaryとしてすすめたいと考えている。Coronaryに閉塞性の病変を有する患者の周術期管理においていかにして周術期の心筋虚血および心筋梗塞を予防するかは未だ解決されない大命題である。様々な薬物療法が試みられる中で唯一その予防効果の有効性が確立されつつあるのはニトログリセリンやCaブロッカーでなく、βブロッカーであることは周知のことと思う。しかしながら本邦で静注可能なβブロッカーはプロプラノロールにみられるように長時間作用性さらにはβ受容体サブタイプに非選択性とその薬理学的な特徴は周術期の使用には躊躇を余儀なくされる。しかしながら、今年秋より静注可能な短時間作用性かつβ1選択性の高いβブロッカーであるランジオロールおよびエスモロールが相次いで発売されることとなり、coronaryに問題を有する患者の管理には朗報といえる。エスモロールは海外において既に多くの臨床例があり、その特徴を十分に知った上で使用できるし、ランジオロールは本邦で開発された薬剤だけに我々がその使用方法を世界に示しうるという楽しみがある。折しも本年1月号のBr J Anaesthにはβ受容体とβブロッカーについてのreviewが掲載された。本レビューではまずこのreviewを概説し、引き続きCABG麻酔に伴う中枢神経障害、CABGにおける硬膜外麻酔の是非、周術期の心筋虚血予防および心筋保護についての文献を取り上げていく予定である。今年も例年同様臨床の最前性に立たれる先生方に役立つ情報提供を心がけていきたいと考えている。