教育講演

セッション:教育講演(5)
日時:9月22日 14:35-15:05
場所:国際会議室
司会:佐藤重仁 (浜松医科大学麻酔・蘇生学教室)

不整脈最新の治療

国立循環器病センター 内科心臓部門
○栗田隆志
 医用電子工学の進歩に基づく現代医学の発展には目を見張るものがあり、かつては想像もできなかった治療法が次々と臨床応用され、すばらしい成果を挙げている。不整脈領域における治療も例外ではなく、今回はその最先端を紹介したい。

1.3次元表示マッピングシステムによるカテーテルアブレーション CARTOシステムは患者の背部に固定された三箇所の磁気発生装置からカテーテル先端に内蔵されたセンサーまでの距離を測定し、カテ先端の絶対的空間位置を瞬時にコンピュータ画面上に表示することができる。従来の透視2方向の画像によりカテ位置を推定していた電気生理学的検査の最大の弱点が克服され、回路を回旋する興奮や、波状に広がる自動能の中心などが掌握できるようになった。CARTOによる頻拍機序の解明は同時にアブレーション至適部位の同定に貢献し、難治性頻拍の根治に多大な威力を発揮している。当日の発表では代表的な頻拍の興奮パターンと、アブレーション部位決定の実際を紹介する。

2.心不全患者に対する両室ペーシング 左脚ブロック(LBBB)を有する心不全患者においては、心室中隔に対して左室自由壁の心収縮のタイミングが遅れるため、有効な心収縮パターンが得られず、心機能の悪化に一層の拍車が掛かる。左室側壁心静脈内にペーシングリードを挿入し、両室を同時にペーシングすることで心収縮の再同期化が得られ、心不全症状や予後の改善が期待される。当日の発表ではLBBBによる非同期的心収縮のパターンと、同時ペーシングによる再同期化を動画にて示す。

3.植込み型除細動器(ICD)と自動式体外除細動器(AED) ICDの小型軽量化と多機能化は徐細動効率や頻拍の鑑別診断能力を高め、VT/VF患者の生命予後やQOLの改善に大きな役割を果たした。陳旧性心筋梗塞による低心機能患者に対するICDの1次予防的効果を試験したMADIT-IIはICDによる総死亡率の改善を証明し、その適応はさらに拡大するであろう。また、ICD患者における最大の死因である心不全死を両室ペーシング機能が備わった次世代ICDにより予防しようとする試みがなされている。
 不整脈の診断が自動的に行われるAEDの開発により、院外で発生したVT/VFに対して一般市民による除細動が可能になった。わが国においては医師法の制約のため非医師による使用が実現していないが、テクノロジーの進歩にあわせた対応が望まれる。