一般演題

セッション:ポスター 8
セッション名:プロポフォール・ミダゾラム
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:505会議室
演題順序:5番目

術前の心エコー検査による駆出率とプロポフォール導入量の関係

高松赤十字病院 救急部1
市立岸和田市民病院 麻酔科2
○馬屋原 拓1、富永麻意子2、近藤三鈴2、久米川雅之2、森山 享2
【背景】プロポフォールの導入量に影響を与える因子には、患者の体重や年齢などがある。導入直前の心拍出量(CO)もそのひとつで、COが低いとプロポフォールの血中濃度が上昇しやすく導入量が減少する1)2)。導入直前のCOを知ることは麻酔薬の過量投与を避ける上で参考になるが、全ての症例で導入直前にCOを測定するのは簡単ではない。一方、心機能の問題を疑われた症例では術前に心エコーを施行していることが多い。そこで術前の心エコーで測定された駆出率(EF)が導入量に影響を与えるか、検討した。

【方法】20歳から80歳までの、術前に心エコーを施行された予定手術患者46名を対象とした。前投薬は投与せず、プロポフォール 40mg/kg/hの持続静注で導入した。軽く肩をたたきながら開眼命令して、患者の反応が消失した時点での総投与量を導入量とした。反応消失の判定はEFを知らない麻酔科医が行った。導入量とEF、年齢、身長、体重との関係について検討した。

【結果と考察】46症例中、心臓手術が13例、非心臓手術が33例であった。EFの最低値は42%、平均値は68%で、極端にEFが低い収縮不全の症例は無かった。年齢と導入量(r=-0.557、p<0.0001)、身長と導入量(r=0.541、p<0.0001)、体重と導入量(r=0.585、p<0.0001)の間には弱い相関を認めたが、EFと導入量(r=0.070、p=0.6442)の間には相関は認めなかった。導入直前のCOとは違い、EFは導入量に影響を与えなかった。理由として、EFは左室の収縮力のみの指標であり、心拍数や前負荷の変化により必ずしもCOと相関しないことが考えられる。

【結論】EFは、極端に低くない場合は、プロポフォールの導入量を決定する際に参考にならない。

1) Upton, et al. Cardiac output is a determinant of the initial concentrations of propofol after short-infusion administration. A&A 1999;89:545-52.
2)Adachi, et al. The determinants of propofol induction of anesthesia dose. A&A 2001;92:656-61.