一般演題

セッション:ポスター 11
セッション名:経食道心エコー
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:405会議室
演題順序:2番目

経食道心エコーが有用であった左室瘤破裂緊急症例

慶應義塾大学 医学部 麻酔学教室
○山田達也、桜庭茂樹、長田大雅、田川 学、武田純三
心臓手術における経食道心エコーの有用性についての報告は多く、特に術中のdecision makingに対する貢献度は大きい。今回、大動脈解離の術前診断で緊急手術となったが、麻酔導入後の経食道心エコーにより左室瘤破裂と再診断され、手術が無事に行われた症例を経験した。
症例:55歳、男性。突然の前胸部痛にて発症、冷汗、顔面蒼白状態となり、高度血圧低下からショック状態となった。入院時血圧は76/48mmHg, 心拍数は62bpmで、意識清明であった。高血圧の既往があり内服治療中であった。術前胸壁心エコー、X-P、CTで上行大動脈解離、心タンポナーデの診断を受け緊急手術となった。手術室入室時の血圧は106/74mmHg、心拍数は97bpmであった。麻酔はフェンタニル400mcg、ミダゾラム1mg、ベクロニウム10mgで導入し、引き続きフェンタニル300μg/h、ミダゾラム2mg/h、ベクロニウム5mg/hで維持した。術前のCT所見ではバルサルバ洞動脈瘤破裂が最も疑われ、ベントール手術が予定されたが、麻酔導入後に行った経食道心エコーにより大動脈弁直下に左室瘤を認め、大動脈弁輪と僧帽弁輪の間から始まり左房と大動脈の後面に存在する左室瘤破裂と診断された。また、大動脈弁についても石灰化した二尖弁の所見が得られた。心タンポナーデを合併していたため不用意な心膜切開は危険と考え、大腿動静脈にカニュレーションし体外循環下に心膜を切開し、心タンポナーデを解除した。心停止後に大動脈を切開し経大動脈弁輪的に左室内にアプローチし、fibrous subaortic curtainの一部欠損による瘤口部をパッチ閉鎖し、その後に大動脈弁置換術を行った。術後経過は順調で1PODに人工呼吸器から離脱し、20PODに軽快退院となった。
考察と結語:今回、経食道心エコーは心タンポナーデの循環管理や体外循環離脱に有用であっただけでなく、執刀前の精査により左室瘤や二尖弁など術前診断では分からなかった診断が可能であり、術式の決定に重要な役割をはたした。