一般演題

セッション:ポスター 10
セッション名:症例
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:404会議室
演題順序:5番目

両側内頚動脈狭窄と連合弁膜症を合併した患者の麻酔経験

聖マリアンナ医科大学 東横病院 麻酔科
○福島祐二、福島亜希、杉内 登
両側内頚動脈狭窄、連合弁膜症、肺高血圧および肺気腫を合併した患者に脊椎・硬膜外麻酔で管理した症例を経験したので報告する。
【症例】59歳、女性。卵巣癌疑いで手術が予定されたが、術前検査で両側内頚動脈狭窄と僧房弁狭窄および大動脈狭窄の連合弁膜症とそれに伴う肺高血圧を指摘。他院にてPTMC施工後、手術が施行された。
【麻酔経過】ECG,NIBP,SpO2,rSO2,ABR,ABPをモニタリングした後、第1/2腰椎間より硬膜外カテーテルを留置後、第3/4腰椎間より等比重0.5%塩酸ブピバカインで脊椎麻酔を施行した。第11胸椎レベルまで無痛域を得たことを確認後、手術を開始した。手術開始直後に患者が痛みを訴えたため、フェンタニルを静脈内投与したところ、血圧が低下したため、塩酸エフェドリンの投与と塩酸ドパミンの持続投与を開始した。血圧の回復に伴って散発的に心室性期外収縮を認めた。血圧が回復した時点で患者が嘔気を訴えたためドロペリドールを投与した。その直後に6連発の心室性期外収縮が出現したため、塩酸リドカインを投与した。この間、患者の意識は清明であった。検体が摘出され再び患者が嘔気を訴えたためドロペリドールを追加したところ血圧が低下し徐脈となった。直ちに塩酸エフェドリンを投与したが、rSO2も低下を認め、患者は一時的に意識レベルの低下を認めた。血圧の回復にしたがい、再び心室性期外収縮を認めたため塩酸リドカインの投与で対処した。その後は不整脈の出現もなく手術を終了した。術後の無痛域は第8胸椎以下であった。意識は清明であり、1%メピバカインで硬膜外持続注入を開始して麻酔を終了した。
【考察】内頚動脈狭窄のある患者では血圧管理が重要であるが、本症例では術中に二回の血圧低下を来たした。昇圧剤の投与により不整脈の発現を認めた。これは本症例が連合弁膜症も合併していたことに起因すると考えられた。連合弁膜症に対して循環動態の変動を少なくするために脊椎・硬膜外麻酔にて麻酔管理を行ったが、鎮静薬の投与によって循環作動薬を使用しなければならない状況に陥ったと考えられた。rSO2のモニタリングは脳血流低下の早期発見に有用であった。
【結語】連合弁膜症に内頚動脈狭窄を合併した患者の麻酔を経験した。脊椎・硬膜外麻酔下に管理したが、安易な鎮静薬の使用により循環動態の変動をきたした。