一般演題

セッション:ポスター 1
セッション名:モニタリング
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:403会議室
演題順序:5番目

経頭蓋超音波ドプラの安全性検討 −長時間モニタリングによる頭蓋内温度上昇効果に関する実験的検討−

東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座1
東京慈恵会医科大学 ME研究室2
○中川清隆1、古幡 博2、谷藤泰正1、天木嘉清1
【目的】
経頭蓋超音波ドプラ(TCD)は開発以来広く普及し、麻酔科領域では特に心臓血管外科麻酔中の脳血流モニターとして使用されつつある。その一方、超音波照射は一種のエネルギー投与であり、生体組織における温度上昇を招来することが知られている。従って、安全性の観点から長時間連続でTCDを照射した場合の頭蓋内の温度上昇が危惧される。我々はTCDが、長時間、最大出力条件で超音波照射をした場合、成人の頭蓋内温度上昇を予測するため、次の実験を行った。
【方法】
isoflurene吸入全身麻酔下で、NZW rabbit 15羽(超音波照射群10羽、非照射群5羽)の脳内及び脳表に針型熱電対を挿入。頭蓋骨上、頭頂部より超音波照射し、脳表温度(skull-brain interface temperature: SBT) 及び脳内温度(brain temperature: BT)の変化を測定。TCDはPioneerTM(Nicolet Biomedical Inc. Wisconsin )を用い、照射条件は2MHz、最大出力0.2W(64mW/cm2)、連続90分間とした。
【結果と考察】
超音波照射群では、SBTは20分で、BTは25分で、各々最高値3.3±0.3℃、1.8±0.3℃(平均値±S.E.)に達し、その後プラトーを形成した。超音波照射群の温度変化は、非照射群に比し有意な変化であった(p<0.05)。超音波による温度上昇(T)が胎児軟部組織の異常を引き起こさない安全な超音波照射時間の閾値(t)はt=443-Tの関係になる1)。37℃から3.3℃上昇したと考えればTCDの安全照射時間は42分となる。この値は胎児軟部組織に対するもので多少厳しく安全閾値を規定している2)。しかし、安全性を検討する場合worst caseを想定するのが原則で、この値を成人の脳組織に適応するのは何ら問題がないと考えられる。また、成人の脳容積はrabbitに比し約100倍あるので3)、成人のTCDによる温度上昇は本実験よりも低値を示すと推測される。ただし、局所での単位重量当りの組織還流量4)など温度に関する状態は、成人とrabbitでは差がないので局所のSBTは両者間で大差ないと考えられた。
【結語】
TCDの安全使用の観点からworst caseを考え、TCD連続使用は温度による組織の損傷を避けるため、40分毎に10分間の休止が必要であると考えられた。
【参考文献】
1)Miller MW, Ziskin MC. Ultrasound Med Biol: 707-722; 1989
2)Sminia P et al. Int J Hyperthermia 1-30; 1994
3)Kozma C et al. The Biology of The Laboratory Rabbit: 50-73; 1974
4)Cenic A et al. Anesth Analg: 1376-83; 2000