ディベート

セッション:ディベート(1)
セッション名:より複雑な小児心臓麻酔管理をめぐって
日時:9月22日 10:00-11:30
場所:国際会議室
演題順序:2番目

RV-PA shuntによるNorwood手術の麻酔,周術期管理

岡山大学 医学部 麻酔・蘇生学教室
○竹内 護、岩崎達雄、多賀直行、大江克憲、落合陽子、森田 潔
【目的】左心低形成症候群(以下HLHS)に対するNorwood手術の成績は近年向上し、根治術であるFontan手術後の生存例も増加している。本邦における成績向上にはBT shuntからRV-PA shuntへの術式の変更が大きな要因であると思われる。今回は主にRV-PA shuntによるNorwood手術の麻酔、術後管理について述べる。
【成績】1992年2月から2002年4月までの10年3カ月間に岡山大学附属病院にて行われたHLHSに対するNorwood手術は51症例(男児31、女児20)であった。手術時平均日齢は13日(1-74日)、体重は2.7kg(1.6-3.9kg)であった。97年までの30症例はBT shunt で、98年以降の21症例は全例RV-PA shuntで行った。成績はBT shunt では12症例(40%)、RV-PA shuntでは19症例(90.5%)を救命した。術前は肺血管抵抗(PVR)を高めに保つ呼吸循環管理を行い、挿管症例では準緊急手術とする。窒素を2症例に使用したが、基本的に窒素が必要な状態では早めに手術を行う。麻酔は全例大量フェンタニル(150-200μg/kg)にて行った。RV-PA shuntでは人工心肺離脱後と術後管理においてPVRを高めに保つが、BT shunt施行時ほど極端な管理は必要でなく、PaCO2は45mmHg前後とする。術後心不全予防のため胸骨は開放のままとし、2-3日後にdelayed sternum closureを行う。通常、胸骨閉鎖翌日から人工呼吸器のウイニングを開始できる。BT shuntに比べてRV-PA shuntの手術成績が良いのは、術後早期に拡張期血圧が低下せず呼吸循環動態が安定しているためである。
【結論】BT shuntからRV-PA shuntに術式を変更することにより手術成績は明らかに向上した。術後の呼吸循環動態の安定にはPVRを高めに保つ管理を行うが、BT shunt施行時ほど極端な管理を必要としない。
参考文献:左心低形成症候群の管理;<小特集>小児心臓麻酔  竹内護、森田潔、平川方久:臨床麻酔第21巻第8号, 1221-1226, 1997