一般演題

セッション:ポスター 16
セッション名:術中・術後管理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:505会議室
演題順序:5番目

分離肺換気にもっと右用チューブを使おう

新東京病院 麻酔科
○菊池恵子、小西晃生、中川雅之
分離肺換気用ダブルルーメンチューブ(以下DLT)は右肺摘出以外では左用が第一選択される.右用DLTでは右上葉枝の閉塞の危険性があるからである.しかし,解剖学的には右に入りやすく,胸部動脈瘤では瘤による気管の圧排で,左に挿管するのが困難なことが多い.また右側臥位の手術で左用DLTを用いると術中操作で右気管支が押しつぶされ,下側肺の換気が困難になることもある.最近我々は大動脈解離の下行置換術,胸腹部置換術,およびMIDCABに右用DLTを積極的に使い始めた.今回,右用DLTの安全性について検討を行った.
【対象と方法】2001年11月から2002年5月に行われた分離肺換気(DLV)が必要な症例.DLTはブロンコ・キャス気管支内チューブTMを用い,男性は37 Fr,女性は35Frを使用した.挿管後聴診で分離されていることを確認し,CVおよびSGカテーテルを挿入,体位変換後気管支ファイバーで位置の確認,修正を行った.深さは気管ルーメンから見て右側の青いカフの上縁が気管分岐部に見える位置に固定したが,この際右上葉枝口を側孔に合わせることは無理には行わなかった.
【結果】症例は25(男性20,女性5)例で平均年齢68歳,身長160cm,体重60kgであった.挿管はすべての症例で一度で右に入った.術中SpO2の低下はFIO2を上げるなどの処置で対処できる範囲内であった.術中換気が困難になったり,右肺に血液が垂れ込んだりするトラブルもなかった.術後レントゲン写真で無気肺が認められた症例もなかった.
【考察および結論】心血管疾患を持つ患者では循環変動を極力避けたいが,DLTの挿管のし直しや,ファイバーでの位置確認操作中はどうしても循環管理がおろそかになる.これは患者のみならず麻酔科医にとっても大きなストレスである.右用DLTを使えば必ず右に挿管でき,右側臥位手術では気管支チューブが下位側の気管支の支持になるため,換気困難になりにくく,下位側(健側)に血液が垂れ込むなどのトラブルも少ない. 右上葉枝口を側孔にあえて合わせなくても換気困難や無気肺が起こることはなかった.右用DLTは安全域が狭いと敬遠されがちであるが,もっと積極的に使っても良いのではないかと思われる.