一般演題

セッション:ポスター 12
セッション名:オフポンプCABG
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:406会議室
演題順序:2番目

もやもや病合併症例に対するオフポンプバイパスの麻酔経験

桜橋渡辺病院 麻酔科1
中津済生会病院 麻酔科2
○安部和夫1、高橋 響2
{症例}67歳男性、平成6年5月頭痛、意識喪失発作のため近医受診し脳血管造影により左右側もやもや病の診断を受ける。以後外来通院を続けていた。平成7年狭心痛出現し当院受診。冠動脈造影にて右冠動脈#3が100%閉塞のためPTCA施行し症状は消失した。今年再び狭心痛出現し冠動脈造影により#1,2,3 90%, #7 75%、#11#12 75%閉塞のため、手術適応となった。
{麻酔および術中経過}フェンタニール0.2mg静注、プロポフォール10mg/hr持続静注で入眠後気管内挿菅した。右内頚静脈よりスワンガンツカテ、中枢用トリプルカテを挿入した。左内頚より脳底静脈に逆行性にカテーテルを挿入した。前額部にtranscranial optical spectroscopy TOS 96(Date Medical)のプロ−ベを貼付した。血圧、心拍数、肺動脈圧、中心静脈圧、心拍出量、脳底静脈酸素飽和度、左右局所脳酸素飽和度rSO2,HbIを、手術開始前[T1]、胸骨切開後{T2}、内胸動脈剥離中[T3]、心脱転時[T4]、内胸動脈前下行枝吻合中[T5]吻合終了15分後[T6]の6回測定した。平均血圧は術中低下しなかったが肺動脈圧は脱転時、吻合中に21mmHgから35mmHgに上昇した。rSO2は変化しなかった。HbIは左側1.20 [T1], 1.32 [T2], 1.07 [T3], 0.80 [T4], 0.97 [T5], 1.29 [T6] 右側0.95 [T1], 1.17 [T2],1.03 [T3], 0.74 [T4], 0.82 [T5] 1.01 [T6]と脱転中、吻合中にいずれも低下した。脳底静脈酸素飽和度は72.7%(T1), 75.4%(T2), 65.4%(T3), 52.8%(T4), 61.3%[T5], 76.3%[T6]と推移した。手術終了後ICUに収容し当日抜菅した。術後神経系も含め経過良好であった。
{結語}もやもや病合併症例の心臓手術は世界でもほとんど報告はない。もやもや病では脳の自動調節能が障害されている恐れがあり、血圧の低下に留意した。麻酔中ドパミン、NTG、ジルチアゼムを麻酔中を通じて持続投与した。手術中循環動態に著明な変化は無かったが脳底静脈酸素飽和度、HbIが心脱転時、吻合中に低下し、心臓手術中の脳虚血を示唆している可能性がある。