パネルディスカッション

セッション:パネルディスカッション(5)
セッション名:Off pump CABG:PDEV阻害薬のPro/Con
日時:9月22日 14:05-15:35
場所:メインホール
演題順序:1番目

Off-Pump CABGにおける視野展開と手術手技

京都府立医科大学 心臓血管外科
○夜久 均、嶌田泰之、北村信夫
近年Off-Pump CABG(OPCAB)においても心臓後下面を含めた各領域の視野展開が可能になり、完全血行再建が可能になってきている。しかし、心臓後下面の冠動脈に対するgraftingの際には、心臓脱転に伴うhemodynamicsの不安定化を最小限に抑え、しかも吻合のための充分な作業空間を得るために、手術手技上、麻酔管理上の工夫が不可欠となってくる。我々の視野展開、手術手技の実際をビデオを交えて発表する。
【Graftingの順序】必ず左前下行枝から始める。左前下行枝は最も重要な枝であり、しかも吻合に際して心臓を脱転しないで行えるからである。その後心臓を脱転し、回旋枝、右後下行枝への吻合を行う。
【視野展開】心臓後下面の冠動脈に吻合を行う際には心尖部を左方から挙上させ、さらに右方に脱転する必要がある。その際起こりえる低血圧の原因としては、右側心膜、右胸骨による心臓の圧迫、心臓の歪みによる僧帽弁、大動脈弁の逆流である。これらを回避すべく右側心膜を広く切開し、右胸骨を挙上する。その際、手術台を右側(術者側)にローテートする。また経食道心エコーにて弁逆流を評価する。
【心筋保護】吻合中には一時的に冠動脈を遮断するため、その領域の心筋虚血が生じる。虚血を最小限に抑えるために、冠動脈切開口からintraluminal shuntを挿入し、吻合中も冠動脈末梢への血流を確保する。
【静止野、無血野の確保】吻合中は吸引型スタビライザーを用い、心臓を押さえることなく静止野を得る。また吻合中、流出する血液はCO2 blowerで吹き飛ばし無血野を得る。
【吻合】心停止下の吻合と同じ1点パラシュート法の1針連続で行い、また糸も同じ7-0または8-0 Proleneを用いる。
【目標血行動態】収縮期体血圧を100 mmHg以上、拡張期肺動脈圧を15 mmHg以下に保つ。そのためには適正なvolume adjustmentを行い、必要に応じて昇圧剤(ノルアドレナリン)を用いる。また心拍数を70台までにコントロールし、必要に応じて塩酸エドロホニウムを用いる。