一般演題

セッション:ポスター 10
セッション名:症例
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:404会議室
演題順序:4番目

MIDCAB施行後、呼吸不全に陥った高齢者の一症例

昭和大学 横浜市北部病院 麻酔科
○野本功一、山田佐世子、吉田達也、池田東美明、鈴木尚志、世良田和幸
低肺機能の高齢患者にMIDCABを施行後に呼吸不全を併発し、人工呼吸器からの離脱に難渋した症例を経験したので報告する。
【症例】89歳男性、150cm、31.0kg。CAGにて前下行枝のみに高度狭窄を認め、陳旧性心筋梗塞、狭心症の診断のもとMIDCABが施行された。既往に肺気腫があり、VC 1300ml、%VC 49%、FEV1.0 960ml、%FEV1.0 70%と混合性障害を認めた。空気呼吸下の血液ガスは、pH 7.33、PCO2 55mmHg、PO2 80mmHg、BE +2.1であった。麻酔導入後、左気管支用ダブルルーメンチューブを挿管し、中心静脈ならびに肺動脈カテーテルを挿入後、手術を開始した。維持にはセボフルラン、酸素、空気を用い、適宜フェンタニール(計300μg)を追加した。分離換気時は右肺へのセボフルラン/酸素による換気と、左肺への酸素の吹送により低酸素血症を来たすことなく経過した。無輸血手術を185分で終了し、自発呼吸の出現を待って手術室で抜管した。ICU入室後にCO2ナルコーシスを来たしたため再挿管し、1PODに抜管したものの、再度CO2ナルコーシスを来たし同日再び挿管した。3PODにはミニトラックTM施行下に抜管し、経口摂取を10PODに開始したが、12PODには誤嚥性肺炎のため人工呼吸管理に戻った。IMVによる強制換気回数の漸減、プレッシャーサポートによる支持圧漸減、BiPAPを用いたon−off法など、種々の方法によりウイーニングを試みたが成功せず、24PODに気管切開術施行後、人工呼吸器を装着したまま一般病棟へ転棟した。180POD現在、夜間のみ人工呼吸器の装着を要する状態であり、長期療養型の後方施設への転院を検討中である。
【考察】MIDCABは早期覚醒、早期抜管が可能であり、入院日数の減少や医療コストの削減を期待できる。従来の冠動脈バイパス手術に比べて手術手技が低侵襲であるため、ハイリスク患者にもしばしば適用される。しかし麻酔自体が患者に及ぼす影響は通常の開胸手術と比較して少ないとはいえない。MIDCABの利点を生かすため、特にハイリスク患者では一貫した周術期管理が重要であり、本症例を踏まえて今後さらに検討していく必要がある。
【結語】MIDCAB施行後、呼吸不全に陥った高齢者の症例を経験した。ハイリスク症例では、外科医と麻酔科医の綿密な打ち合わせが重要であることから、今回の周術期管理の反省と今後の方針を交えて報告する。