藤田昌雄賞

セッション:藤田昌雄賞
セッション名:藤田昌雄賞候補発表
日時:9月21日 14:55-16:05
場所:メインホール
演題順序:3番目

僧帽弁形成術の経食道3Dエコーによる評価

東京女子医科大学 医学部 麻酔科学教室
○向井詩保子、野村 実、黒川 智、深田智子、尾崎 眞
 経食道心エコー(TEE)は僧帽弁形成術(MVP)において必須である。しかし、通常モニターしている2D TEEでは、心臓外科医に供給できる情報は主観的になりやすく、またその立体的なイメージをつくりあげるのに経験が必要である。今回我々はMVPにおいて2Dおよび3D TEEで評価した。
【方法】2Dおよび3D TEEの両方が十分描出可能な、11才から77才(平均52±17.1才)の僧帽弁逸脱症にてMVP予定患者12例を対象とした。麻酔導入後2D TEEにおける標準的な5画面を描出し、ビデオテープに収録した。後日off lineで、TEEの経験が充分な複数の観察者で、Carpentierの分類に基づき前尖、後尖をそれぞれ3つ(A1, A2, A3,P1, P2, P3)にわけ各6箇所に尽き逆流部位の有無、弁逸脱部位の有無について観察し評価した。3D TEEの構築は、2D TEEで目標組織を中心にマルチプレーンで3°から6°ごとに回転させた画像を1拍ずつ心電図に同期させてTEE装置の3Dソフトで経時的に取り込み、解析ソフト(トムテック社製)で3D画像を構築し術者視野で評価した。評価者の一致が見られない項目は有意な逆流や弁逸脱として採用しなかった。
【結果】逆流部位の一致率は72ポイント中55ポイント(76.4%)、弁逸脱部位の一致率は72ポイント中50ポイント(69.4%)であった。また、3D TEEによる構築像を基準とすると逆流部位および弁逸脱部位の診断が2箇所以上異なっていた症例は全体症例の12例中6例(50%)、8例(67%)であった。3D TEEを基準とした感度56.5%、特異度74.5%であった。
【考察】3D TEEは最新の機能ではあらゆる方向に回転させることができ、術者視野やいろいろな方向からの観察も可能である。したがって、逸脱部位や逆流の向きだけでなく、弁尖の形やどの部位が弁尖の基準ラインから盛り上がっているかなど、心停止後の観察では判定困難な情報も得られる。今回の結果をみると、2D TEEによる評価では限界があることが示唆された。2D TEEでは5画面に観察視野を限ったためその診断精度は高くなかったが、さらにほかの観察像を加えるなどすればその精度は高まる可能性がある。
【結論】3D TEEは単なる術前、術後評価というよりも、術前の詳細な観察と心臓外科医との十分な討議が可能であり、MVPの評価に2D TEEよりも精度が高い。