一般演題

セッション:ポスター 6
セッション名:脳・神経
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:503会議室
演題順序:3番目

胸部大動脈瘤手術における肋間・腰動脈テストクランプ時の運動誘発電位モニタリングに関する一考察

奈良県立医科大学 麻酔科学教室1
奈良県立医科大学 第三外科学教室2
○堀内俊孝1、川口昌彦1、井上聡己1、垣本めいこ1、坂本尚典1、古家 仁1、多林伸起2、谷口繁樹2
胸部下行および胸腹部大動脈瘤手術では術後に対麻痺を生じる可能性があり対策が急務である。対策の一つとして、再建すべき肋間・腰動脈の決定に対して、運動誘発電位(motor evoked potential;MEP)モニタリングが有用であったとする報告がある。一方で、Adamkiewicz arteryが起こる肋間・腰動脈を術前に画像診断しその動脈を再建することの有用性が報告されている。今回我々は、術前の核磁気共鳴画像血管造影法(MRA)でAdamkiewicz artery が起こると診断された腰動脈に対する術中テストクランプ前後でMEP記録を行った2症例について報告する。
【方法】MEPは、経頭蓋的電気刺激による、拇指球筋および送血管非挿入側の前脛骨筋からの複合筋活動電位記録にて行った。麻酔はプロポフォール,ケタミン、フェンタニルで維持した。大腿動脈送血、大腿静脈脱血による常温部分体外循環が用いられた。
【症例1】79歳男性。Crawford type IVの胸腹部大動脈瘤に対する手術が予定された。術前のMRAによりAdamkiewicz arteryは主に左L1腰動脈から起こる(左Th11肋間動脈も関与する可能性がある)と診断された。術中に左L1腰動脈を20分間テストクランプしたところMEP変化はみられなかった。同腰動脈は温存された。術後に下肢運動機能障害は生じなかった。
【症例2】77歳男性。胸部下行大動脈瘤に対する手術が予定された。術前のMRAによりAdamkiewicz arteryは左L1腰動脈の分枝から起こると診断された。術中に左L1腰動脈を20分間テストクランプしたところMEP変化はみられなかった。同腰動脈は温存された。術後に下肢運動機能障害は生じなかった。
【考察】脊髄血流に対する肋間・腰動脈の機能的重要性や脊髄血流の側副血行路についてさらに検討し、対麻痺防止のための術式決定に対して正確な情報を提供してゆく必要があると考えられた。