一般演題

セッション:ポスター 3
セッション名:大血管手術
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:405会議室
演題順序:3番目

当院における過去6年間の腹部大動脈瘤の破裂症例の検討

名寄市立総合病院 麻酔科1
旭川医科大学 麻酔・蘇生科2
○舘岡一芳1、安田 茂1、高畑 治2
 過去6年間に当院に搬入された腹部大動脈破裂症例を調査し周術期における問題点等を検討した。また同時期に行われた未破裂腹部大動脈瘤と予後等を比較した。
【対象】1996年1月から2001年12月までの6年間に手術に至った腹部大動脈瘤破裂患者とした。
【結果】男性9名、女性1名の計10名であった。患者の年齢は72.0(±9.0)歳であった。麻酔の導入には全例フェンタニルが用いられ、さらにサイアミラール(3例)、プロポフォール(2例)、ミダゾラム(2例)あるいはケタミン(3例)が用いられていた。術中の麻酔管理は少量のフェンタニル(平均3.8μg/kg)と少量のプロポフォール(最大2mg/kg/h)、低濃度の吸入麻酔などが用いられていた。患者の状態によっては100%酸素で換気が行われた。硬膜外麻酔は全例行われなかった。発症したと思われる時間から手術開始までおよそ410(±230)分、手術時間は241(±48) 分、麻酔時間は295(±41) 分であった。
【予後】搬送距離が140kmの患者1名と180kmの患者2名は手術死であった。搬送距離が20km前後の場合は5名中3名が生存退院できた。院内発症では胸部大動脈瘤術後7日目発症の患者は失ったが、他1名の院内発症は生存退院出来た。出血量が10000gを越えた2名は1名が手術死したが、1名は生存退院できた。逆に出血量が1200gと少ない症例でも手術死していた。69歳以下の症例では3名中2名生存退院ができたが、70歳以上では1名しか生存退院できなかった。全体では10例中7例は病院死であり、うち6例は手術後1ヶ月以内の手術死であった。死亡した7名のうち2名は周術期心筋梗塞であった。そのほか腎不全、イレウス、呼吸不全、DICなど多彩な病態を示した。未破裂47症例のうち手術死が1例発症した。
【考察】腹部大動脈瘤破裂10名のうち生存退院ができたのは3名のみで極めて予後が悪かった。10名中5名は破裂する前に腹部大動脈瘤の存在が指摘され、手術が検討されていたことから破裂する前に手術する事ができれば大きく予後を改善できたと考えられる。