一般演題

セッション:ポスター 10
セッション名:症例
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:404会議室
演題順序:2番目

拡張型心筋症と心室中隔欠損を合併した帝王切開術に対する脊硬麻の経験

北海道大学大学院 医学研究科 侵襲制御医学講座
○久野健二郎、森本裕二、劔物 修
拡張型心筋症と心室中隔欠損症(VSD)を合併した骨盤位の帝王切開術を脊硬麻で管理した経験を報告する。患者は24才の初産婦。幼少時からVSDを指摘され経過観察されていたが、高校卒業時より受診を自己中断していた。妊娠24週時、体動時の動悸を自覚したため、心エコー検査が施行され、特発性または産褥性拡張型心筋症の診断で当院産科に入院となった。入院時の心胸郭比0.55,心エコー検査でQp/Qs1.2の心室内左右逆流、左室駆出率0.34、左室拡張期径57mm、心室中隔壁厚8mm、左室後壁厚7mmと心室壁の菲薄化を伴う心拡大と収縮の低下が見られた。心電図上多形性PVCが散発し、血圧は80/40mmHg程度であった。体動時に動悸が何度か生じたが安静で自然消失し、他所見も入院時と比較して大きな変化が見られなかったので、37週時に帝王切開術が予定された。手術室入室後、マスク下に酸素投与を開始した。除細動シートを貼布した後、局所麻酔下に左橈骨動脈に動脈ラインと右内頚静脈に中心静脈ラインを確保し、動脈圧と中心静脈圧(CVP)を測定した。ドパミン3μg/kg/minの投与を開始した後、側臥位でL2/3より硬膜外カテーテルを留置後L4/5より脊麻を施行し、フェンタニル10μg混入の0.5%等比重ブピバカイン1mlを投与した。仰臥位へ体位変換の10分後に有効麻酔高はL領域以下であった。有効麻酔高を確認しながら、フェンタニル50μgと0.375%ブピバカイン計13mlを分割投与し、脊麻施行の30分後でT4以下の有効麻酔高を確認して手術開始となった。この間血圧は安定したが、一時80/分であった心拍数が110/分に増加し、CVPが2mmHgから-1mmHgに低下した。仰臥位低血圧症候群と判断し、患者を右側に挙上することで元の値に回復した。手術開始の4分後に女児が娩出されたが、直後にそれまで4mmHgであったCVPが7mmHgに上昇した。CVPは漸減し手術終了時は4mmHgに戻った。子宮収縮は良好であり、収縮薬の投与は行わなかった。鎮痛は良好でフェンタニル40μgを硬膜外腔に追加投与したのみであった。手術後に集中治療室へ収容したが、フェンタニルとブピバカインの硬膜外持続投与で良好な鎮痛と、安定した血行動態が得られ、翌日産科病棟へ帰室した。術後11日で母児共に良好な状態で退院となった。