ディベート

セッション:ディベート(1)
セッション名:より複雑な小児心臓麻酔管理をめぐって
日時:9月22日 10:00-11:30
場所:国際会議室
演題順序:3番目

フォンタン系手術の周術期管理

福岡市立こども病院・感染症センター 麻酔科
○水野圭一郎
 独立した駆出心室なしで肺循環を成立させる必要があるフォンタン循環では、手術刺激や疼痛などで増大傾向を示す交換神経緊張を抑制して肺血管抵抗を低く保つことが周術期管理のポイントである。適切な深度の麻酔や鎮痛・鎮静をはかる必要があることは言うまでもないが、高濃度酸素吸入、ニトログリセリン持続点滴静注およびNO吸入が有効であるため、これらも最大限に活用する。人工呼吸は胸腔内圧を上昇させて静脈還流を減少させる方向に働くが、フォンタン循環では特にその影響が不利となるために換気と肺循環のバランスをとることも大切である。
 術前は運動予備力、運動制限やチアノーゼの程度、酸素投与状況などを確認する。先行手術の情報や胸骨と心・大血管などの関係を示す画像データも参考にする。術前検査データから肺血管床の発育の程度(PA Index、肺動脈圧、順行性血流の有無)や房室弁逆流の有無と程度、不整脈の有無、さらに側副血行路の程度なども確認しておく。
 麻酔導入は酸素・笑気・セボフルラン吸入で開始し、静脈路確保後にパンクロニウムとフェンタニル(2〜5μg/kg)を投与して気管内挿管を行う。フェンタニル総投与量は20〜30μg/kg程度とし、セボフルラン、プロポフォール、ミダゾラムを適宜補助的に使用する。
 人工心肺離脱時には肺動脈圧(=中心静脈圧、グレン手術の場合は上大静脈圧)を15mmHg以下に保つ。ドーパミン(5〜10μg/kg/min)、ニトログリセリン(1〜2μg/kg/min)の持続点滴静注と共にNO吸入を20ppmで開始する。NO吸入はICU搬送前までに5〜10ppmに漸減する。
 ICUでは充分な酸素化と無気肺予防に留意しつつ早期に人工呼吸からの離脱をはかる。多くの症例では術後2〜3時間以内に抜管が可能である。人工呼吸中は吸気酸素濃度を40%以上に保ち、抜管後は経鼻カニューラから酸素投与(1〜2L/min)とNO吸入(5〜10ppm)を継続する。
 呻吟や息こらえなどは胸腔内圧を上昇させるため、抜管後も呼吸抑制に注意しつつ塩酸ペチジン持続皮下投与(100〜150μg/kg/h)やクロルプロマジン微量点滴静注などで積極的に鎮痛・鎮静をはかる。

参考図書:Pediatric cardiac anesthesia. 2nd ed. Edited by Carol L. Lake. Appleton & Lange, 1993