一般演題

セッション:ポスター 9
セッション名:薬理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:403会議室
演題順序:5番目

小児心臓手術麻酔へのくも膜下モルヒネ投与併用による鎮痛効果と合併症

静岡県立こども病院 麻酔科
○竹内和世、遠山貴之、尾松徳則、石垣敬子、今村 誠、堀本 洋
 当院では、小児心臓手術の麻酔管理にくも膜下モルヒネ投与を併用して早期抜管、術後鎮痛をめざしている。その効果、副作用等について検討した。
[対象]2001年10月から2002年4月までに根治術が予定された重篤な合併症のないASD、VSD、ECDの23症例である。
[麻酔法]麻酔導入後脊麻を行い、塩酸モルヒネ10μg/kg+ブピバカイン(5例)、塩酸モルヒネ5μg/kg+ブピバカイン(12例)、塩酸モルヒネ5μg/kgのみ(4例)をくも膜下腔に投与した。術中維持にはフェンタニル、吸入麻酔薬、プロポフォール等を使用した。
[結果]手術終了から抜管までの時間は平均46.5分で、17例(73%)が手術室で抜管した。鎮痛鎮静薬として術後平均18.5時間後に塩酸ペンタゾシンを投与されていた。合併症は悪心・嘔吐12例(52%)、掻痒感6例(26%)、興奮1例(4.3%)だった。重症例では嘔吐に対して塩酸グラニセトロンを、掻痒感に対してヒドロキシジンを投与した。誤って塩酸モルヒネ50μg/kg(予定投与量の10倍)が投与された1例は抜管後呼吸回数の低下が見られ、塩酸ナロキソンを投与した。脊麻時に出血した1例では投与を中止して手術を施行したが出血による合併症はみられなかった。
[考察]術後悪心・嘔吐(PONV)の発生は投与量の差による違いはなかった。掻痒感の発生は投与量により違いがみられた。鎮痛効果がほぼ同様であることを考えれば、モルヒネのくも膜下投与量は5μg/kgが適量と思われる。覚醒後の呼吸抑制が見られたのは10倍量を投与された症例のみで、5〜10μg/kgでは呼吸抑制はなかった。ブピバカインを投与した方が手術開始時の循環動態の変動が少なかったことから、併用する方がよいと思われる。70%以上が手術室で抜管でき、術後管理が容易になる、特に呼吸管理が簡便になるというメリットがある。今回、合併症は症状の発生または訴えがあったものを挙げているが、訴えには個人差が大きいため、十分な判定法を検討する必要があると思われる。有効鎮痛時間は長くなったが、モルヒネの効果が消えた後の鎮痛薬の使用の仕方には今後の検討が必要である。