藤田昌雄賞

セッション:藤田昌雄賞
セッション名:藤田昌雄賞候補発表
日時:9月21日 14:55-16:05
場所:メインホール
演題順序:4番目

Leuven maneuverを用いたOPCAB術中の血行動態の解析

九州厚生年金病院 麻酔科
○芳野博臣、松本尚浩
【背景】我々は昨年よりベルギーのカトリック大学Gasthuisberg病院におけるOff-pump CABG(OPCAB)手術と麻酔管理を応用している.このOPCABでは心筋に極力触れずに心臓を脱転するLeuven maneuver法(LM)により脱転時の血行動態の安定性(脱転時の心拍数変化,麻酔中使用血管作動薬の頻度・量が減少)が得られるが機序は不明である.今回我々は,3つの心臓脱転法LM, Lima suture (LS), およびSpooner tape(ST)を比較して,心臓脱転時の血行動態を検討した.
【方法】2001年8月以降に行われたOPCAB9症例において無作為順序で3つの心臓脱転法を行い,心臓翻転時点の平均動脈圧(MAP),中心静脈圧 (CVP),肺動脈圧,心拍出量およびこれらから計算される種々のパラメータについて検討し,Kruskal-wallis検定でp < 0.05を有意とした.
【結果】MAP(mmHg, 平均 ± 標準偏差)は脱転前 79.4 ± 12.6,LM 64.6 ± 14.0, LS 61.2 ± 12.7, ST 50.1 ± 18.1と有意差を認めた.またCO(L/m)では有意差はなかったが,それぞれ5.04±1.24,4.94±1.41,4.42±0.98,3.96±0.73とMAPと同様な傾向 が見られた.HR, SVRには一定の傾向は認めなかった.CVP(mmHg)はそれぞれ 6.5 ± 2.0, 8.0 ± 3.2, 9.4 ± 3.2, 10.3 ± 2.4で,右心系パラメーターではRVSWIは5.44±2.42,4.78±2.31,3.27±1.63,2.53±1.36で両者とも有意差があった.MPAPは15.5±3.62,16.2±3.12,16.2±3.77,16.1±3.44,PVRは83.42±31.1,65.77±48.57,62.05±40.06,51.84±49.02,PCWP10.5±2.72,12.45±4.25,12.67±2.6,13.44±2.19と有意差は認めなかった.
【結論】Leuven maneuver法では安定した血行動態が得られることがデータ上示された.この方法では他の心臓脱転法に比べて,右心流出路狭窄のような右心系血行動態への影響が少なく,左心の前負荷も保たれておりCOが維持されることが示唆された.