一般演題

セッション:ポスター 8
セッション名:プロポフォール・ミダゾラム
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:505会議室
演題順序:3番目

短時間虚血後再灌流ラット生体位心の左心室機能に対するプロポフォールの影響

奈良県立三室病院1
奈良県立医科大学第二生理学教室2
奈良県立医科大学麻酔科学教室3
○葛本直哉1、北川 豊2、伊藤治男2、中橋一喜3、古家 仁3、高木 都2
プロポフォールは近年全身麻酔薬として非常に繁用されている。それゆえ日常臨床の場において(特に緊急手術の場合など)麻酔を行う際、ごく短時間の虚血を以前に経験している患者に対してプロポフォールを投与することも予測される。今回、我々はプロポフォールが3分間という短時間の虚血後再灌流心の左室機能に与える影響を調べるため、左室収縮期末圧容積関係(End-Systolic Pressure-Volume Relation; ESPVR)、 収縮期圧容積面積 (Systolic Pressure-Volume Area; PVA;一心拍当たりの総機械エネルギー)等を用いて正常心と比較検討した。
【方法】ウイスター・リタイアラット20匹を用い、ペントパルビタール50 mg/kgを腹腔内投与して全身麻酔を導入し,気管切開後人工呼吸を行った。実験中は麻酔レベルを一定に保った。薬剤投与ルートとして外頸静脈を確保した。開胸後,3F のコンダクタンスカテーテルを左室心尖部より大動脈基部方向に挿入し、さらに2.5Fミラーカテーテルを同様に左室内に挿入し、左室の容積と圧を連続測定して圧-容積ループを描出する。循環動態が安定後、大動脈基部を閉塞して、後負荷を徐々に増加させ、複数の圧-容積ループを記録し、ESPVRを求めた。これらの測定結果からPVA、ESP、EF(駆出率)、Ea(実効動脈エラスタンス)、HR(心拍数)を求めた。コントロール群はプロポフォール40 mg/kg/hrで持続投与開始後10分、20分、30分後に各パラメーターを求めた。虚血群は左冠状動脈前下行枝を3分間閉塞し虚血状態とした後再灌流した。虚血後再灌流のみによる左室機能に対する影響を60分間調べた後、コントロール群と同様にプロポフォール持続投与を開始し10分、20分、30分後に各パラメーターを求めた。
【結果】3分間の虚血後再灌流60分間ではPVA、ESP、EF、Ea、HRに有意な変化は現れなかった。しかし、プロポフォールはコントロール群では有意な変化を起こさない投与量において、PVA、ESP、EF、HRに有意な減少(P<0.05)を示した。
【結論】血行動態に何ら影響を与えていない程度の虚血再灌流を経験した患者において、プロポフォール麻酔は、通常では左室機能に抑制を起こさない程度の濃度でも左室機能を抑制し、血行動態に変化をきたす可能性が示唆された。