一般演題

セッション:ポスター 13
セッション名:開心術
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:407会議室
演題順序:2番目

感染性心内膜炎による急性三尖弁閉鎖不全に対し三尖弁縫縮術が施行された頸髄損傷症例の麻酔経験

駿河台日本大学病院 麻酔科
○三宅絵里、野中宏子、野村真己子、渡部直人、針谷 伸、野田 薫、佐伯 茂
今回われわれは、感染性心内膜炎による急性三尖弁閉鎖不全に対し緊急三尖弁縫縮術が施行された頸髄損傷症例の麻酔を経験したので報告する。症例は32歳、男性。身長182cm、体重80kg、職業はプロレスラーで、平成13年10月22日試合中に頸髄損傷を受け、第4頸椎神経以下の知覚脱失、四肢麻痺を認めたため当院救命センターで入院加療中であった。入院7日目より弛張熱、血液検査上炎症反応を認めたため、原因を精査していたところ、心エコーで三尖弁に疣贅を認め、三尖弁閉鎖不全と診断され、緊急手術となった。術前検査では貧血(Hb8.0g/dl)、軽度肝機能障害、PaO2の低下を認め、敗血症、急性腎不全の状態であった。本症例は頸椎損傷があったためカラーを装着した状態での挿管が必要であったこと、また体型から挿管困難症が予測されたことから気管支ファイバースコープ下に経鼻挿管することとした。手術室入室後、両前腕より観血的動脈圧ライン、静脈路を確保した。麻酔の導入はミダゾラム、フェンタニルの静脈内投与で就眠させ、ベクロニウムで筋弛緩を得た。その後、気管支ファイバーをガイドワイヤーとして32Fr気管内チューブを挿管した。予測通り挿管は困難で通常より時間を要した。麻酔維持はプロポフォールの持続投与、フェンタニル、ベクロニウムの間欠的静脈内投与により管理した。また経食道エコーの挿入に際しては頸椎の過度の伸展を来たさぬよう慎重に行った。術中の血行動態は安定しており、人工心肺下に三尖弁縫縮術を行った。その後人工心肺からの離脱は容易で手術は無事終了した。麻酔時間は4時間30分であった。術後の経過は良好で、術後1日目に抜管し、13日目には一般病棟に転棟となりその後の全身状態も安定したため、術後39日目にリハビリ病院に転院となった。心臓血管手術の麻酔では麻酔導入時に大きな循環変動をきたさないよう注意することが必要であり気管内挿管を慎重かつ円滑に行うことが要求される。本症例は心疾患に加え頸椎損傷を合併し、かつ短頚猪首であるため挿管困難が予測され挿管方法についてはより慎重に検討した。本症例の詳細について報告する予定である。