一般演題

セッション:ポスター 3
セッション名:大血管手術
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:405会議室
演題順序:2番目

破裂性腹部大動脈瘤緊急手術症例の検討

横浜市立大学医学部附属 市民総合医療センター 麻酔科
○吉崎敦子、岩倉秀雅、藤本啓子
破裂性腹部大動脈瘤の症例は緊急手術を要し、死亡率が高い。過去4年半の間に我々が経験した、42例の破裂性腹部大動脈瘤症例について周術期の予後を規定する因子について検討した。
【対象】 1997年1月から2002年1月までの間に、当センターで行った破裂性腹部大動脈瘤手術42例(男性39例、女性3例)。
【方法】 42例を生存群(S群)34例と死亡群(D群)8例に分け、患者背景、術前状態、発症から手術中の時間経過、瘤の位置、出血量、輸血量、術後合併症等についてretrospectiveに比較検討した。
【結果】 平均年齢、発症以前の腹部大動脈瘤指摘の有無、術前合併症、抗凝固療法の既往など患者背景に両群間の差は認めなかった。術前状態を比較すると、まず意識状態は、D群においてJCS高得点の傾向があり、術前に収縮期血圧80mmHg以下のショック状態を認めた症例は、S群で13/34例(38.2%)、D群6/8例(75%)とD群で高率であった。術前心停止を来した症例は、S群1/34例(3%)、D群3/8例(37%)とD群で高頻度に認めた。発症から当センターに来院までの時間は、S群で平均386±594分、D群1686±3462分とS群で有意に短時間で来院していた(p<0.04)。また来院から手術室入室までの時間もS群平均68±153分(D群187±4分)で有意に短かった(p<0.04)。瘤径平均は両群間に差がなかったが、腎動脈上に位置する症例の頻度がS群2/34例(5.8%)、D群5/8例(62.5%)とD群で高く、また腹腔内に出血が広がっていた症例もS群3/34例(8.8%)、D群3/8例(37.5%)とD群で多い傾向が認められた。出血量はS群2878±1745(ml)、D群11584±7368(ml)と有意にD群で多量であった(p<0.01)。死亡群の平均生存日数は術後4.25日であり、死亡原因としては術中死(1例)、大量出血に伴う凝固能異常によるもの(3例)、急性腎不全(2例)、心筋梗塞合併(1例)、虚血性腸炎(1例)などであった。
【考察】 破裂性腹部大動脈瘤の予後規定因子として、術前の全身状態、発症からの時間、瘤の位置、出血の広がる部位と術中出血量が挙げられた。瘤の位置が腎動脈上にあり、腹腔内に血腫が広がっている場合には、開腹後視野の確保が困難であり、出血量の増加を伴うことを想定し麻酔することが必要と思われた。