一般演題

セッション:ポスター 7
セッション名:CABG
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:504会議室
演題順序:6番目

低左心機能症例の人工心肺下CABG後の頻脈に対するプロプラノロールの有用性

大阪市立総合医療センター 麻酔科
○今中宣依、中田一夫、高木 治、佐谷 誠
目的:我々は、左心機能正常例のCABGにおける人工心肺後の頻脈に対してプロプラノロール(P)が有効であることを、以前報告した。今回、低左心機能症例でのPの使用経験をまとめ、その有用性について検討した。
対象:予定CABG症例のうち、術前の左室駆出率(EF)が30%以下に著明に低下していた症例で、人工心肺後、麻酔薬の投与または容量負荷にもかかわらず調節不可能であった100bpm以上の洞性頻脈に対して、心拍数低下の目的でPを使用した8例とした。ただし、房室ブロックや喘息の既往症例は除いた。
方法:Pの投与方法は、血行動態の変動に注意しながら0.2mg毎にbolus投与した。P投与の前後、及びICU入室後に、収縮期血圧(sBP)、心拍数(HR)、肺動脈拡張期圧(dPAP)、中心静脈圧(CVP)、心拍出量(CO)、カテコラミン(CA)投与量の変動について検討した。P投与後とは心拍数が最も低下した時点で、投与からの時間を最大効果発現時間とした。麻酔方法は、フェンタニルを主としたNLA麻酔で行った。
結果:女性2例、男性6例で、年齢は60±11(45〜77)歳。術前のEFは26±5(17〜30)%で、6例が心不全の既往を有していた。Pの投与量は0.6±0.4(0.2〜1.4)mgで、最大効果発現時間は12.6±3.5(10〜20)分だった。P投与前後の循環動態は、sBP:112.1±16.9→118.0±18.0mmHg、HR:120.3±14.5→100.3±12.0 bpm、dPAP:14.3±1.7→14.5±0.6 mmHg、CVP:8.0±1.6→9.0±1.6 mmHg、CO:6.4±2.6→5.5±2.3 l/minで、HRとCOが有意に低下していた(paired t-test、p<0.05)が、CAの増量あるいは追加を必要とするような血圧や心機能の低下、徐脈は認めなかった。ICU入室以後については、CAの増加した症例はあったが、Pの影響とは考えにくかった。各症例とも循環動態は安定し、全例24時間以内に抜管できた。ICU入室時に6例(5例は糖尿病合併)に高血糖がみられたが、房室ブロック、気管支攣縮は認めなかった。
結語:術前EFが30%以下の症例においても、注意深い観察下でのP投与は、明らかな左室の心機能の悪化を来すことなく心拍数のコントロールに有用であった。