一般演題

セッション:ポスター 6
セッション名:脳・神経
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:503会議室
演題順序:4番目

常温人工心肺によるサイトカイン内頚動脈球部血-動脈血中濃度較差への影響

中国労災病院 麻酔科
○上杉文彦、中川五男、濱田 宏、久保隆嗣、松原由紀
【背景】以前我々は、常温人工心肺(CPB)使用下冠動脈バイパス術(以下CABG)症例の周術期において、内頚静脈球部酸素飽和度(Sj02)が保たれ、脳酸素需給バランスが維持されていれば, IL-6・IL-8内頚静脈球部血-動脈血濃度較差(以下ΔJ−A)は拡大せず、脳内サイトカインの誘導は起こらないことを報告した。
【目的】今回我々は,脳血管障害の既往のある患者を対象に同様の測定を行い、ΔJ−Aに変動があるか検討する.
【対象】CPB使用下予定CABG患者で脳硬塞の既往がある6名。
【方法】麻酔はフェンタニルとプロポフォールで維持した.常温CPBは膜型肺とローラーポンプを用い流量2.5L/min/m2で行った.橈骨動脈圧ライン,右内頚静脈より持続心拍出量測定用肺動脈カテーテルを挿入し,右内頚静脈球部へ4Fr OPTICATHTM(Abbott Laboratories U.S.A.)の先端を留置した.平均動脈圧(MAP)測定と内頚静脈球部血液ガス分析は,手術開始後(T1)・CPB開始5分後(T2)・CPB開始60分後(T3)・CPB終了30分後(T4)・手術終了時(T5)・ICU入室6時間後(T6)・ICU入室12時間後(T7)・ICU入室24時間後(T8)に行った.また,動脈血と内頚静脈球部血を同時に採血し、T1・T3・T5・T6・T8ではELISA法によるIL-6・IL-8の測定を行い、全測定点で乳酸値の測定を行った.
【結果】対象患者は男性3人、女性3人であった.CPB中のMAP(T3)は,他の測定点に比し有意に低値であった.CPB前後に比し、CPB中のSjO2の有意な低下は認められなかった.乳酸値及び IL-6と IL-8濃度は、内頚静脈球部血中と動脈血中との間には全経過を通じて有意差を認めなかった.術後、新たな脳硬塞の発症を疑わせる中枢神経脱落症状を呈した患者は認めなかった。
【結論】脳血管障害の既往の有る患者に対し常温CPBを用いても, SjO2が保たれており、新たな脳硬塞等が発生していない状況では,脳内サイトカインの誘導は起こらないと考えられた。