パネルディスカッション

セッション:パネルディスカッション(4)
セッション名:開心術と非開心術の重複手術の麻酔管理
日時:9月22日 12:30-14:00
場所:メインホール
演題順序:2番目

内頚動脈内膜剥離術とオフポンプ冠動脈バイパス手術を同時施行した不安定狭心症の麻酔

手稲渓仁会病院麻酔科・集中治療室
○片山勝之、本田尚典、長島道生、源 直人、土屋健一、朝井裕一、横山 健、岩波悦勝
冠動脈バイパス手術に伴う内頚動脈狭窄・閉塞症は、術後の脳合併症の極めて重要なリスクファクターである。今回我々は冠動脈バイパス手術直前に両側頸動脈にプラークを伴う高度な狭窄がみつかり、内頚動脈内膜剥離術とオフポンプ冠動脈バイパス手術の同時手術を施行した不安定狭心症の1例を経験したので報告する。症例は、78歳、男性。20年前から労作性狭心症に対して内科的治療が行われていたが、持続的な狭心痛が出現するようになり、近医に入院し緊急CAGにて左冠動脈前下行枝および回旋枝に高度な狭窄が診断された。左主冠動脈内膜に潰瘍がみられたためPCIは行われず、ニコランジル大量投与により一旦症状は落ち着いた。しかし、再度胸痛が不安定化し、当院に紹介となった。術前の頸動脈エコーにより左内頚動脈に63.9%の狭窄と長い分節の 混合型プラーク、右内頚動脈に45.7%の狭窄とソフトプラークが発見され、MRAによっても高度な狭窄が確認された。そのため、どちらの手術を先に行っても合併症は必発と考えられ、準緊急同時手術を行うこととなった。ジアゼパム、モルヒネによる前投薬後、フェンタニル、ドルミカムにより麻酔を導入、麻酔維持はフェンタニルと少量プロポフォール持続投与により行った。術中INVOSによりrSO2を連続モニターした。当初、完全な同時進行を計画したが、術野が取りづらいため、まずCEAを行い、その終了後、OPCABにより2枝バイパスが行われた。手術開始前、狭窄の強い左側のrSO2が若干高い傾向(66 vs. 60 %)であったが、CEA中は左側が低く(50 vs 58 %)なり、CEA術後OPCAB中にはむしろ左側が有意に高い値(64 vs 47 %)を示すようになった。長時間の手術にも関わらず、術中血行動態は安定して推移し、術後も合併症無く経過した。同時手術を迅速に実現するに当たっては、術前評価、術中術後管理の全経過において、心臓外科、脳神経外科、麻酔科、診断技術部の密接な連携とチームワークが不可欠で、今回は非常にうまく全体が機能したと考えられた。同時手術は、段階的手術に比べて麻酔時間が長時間に渡り、患者への侵襲も大きいが、内頚動脈狭窄の重症度と冠動脈疾患の緊急度が高い場合は選択すべき方法である。CEAとOPCABの同時手術は合併症の回避という点で有用な選択であった。