一般演題

セッション:ポスター 4
セッション名:非心臓手術
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:406会議室
演題順序:2番目

非心臓手術における虚血性心疾患の術前評価および冠血行再建時期の検討

熊本中央病院 麻酔科
○前川謙悟、伊藤明日香、本間恵子、馬場知子、後藤倶子
冠血行再建の既往を有する非心臓手術患者において、経皮的冠動脈再建術(PTCA) 施行後1週間以内の内膜不安定期の手術を避けることで有意に周術期心合併症が減少し、冠血行再建時期を考慮に入れた術前評価が重要であることをすでに報告した。今回、術前新たに虚血性心疾患 (IHD) が判明した症例及び術前に冠血行再建を追加した症例から、冠血行再建時期を含めどのような術前評価が重要であるのか検討した。
【方法】非心臓手術症例5569例 (1999.4-2002.3) を対象とした。術前の危険因子、OMI、冠動脈病変の重症度、不安定狭心症、手術リスク、血行再建 (CABG, PTCA) の時期、心合併症を調べた。また腹部大動脈瘤 (AAA)、閉塞性動脈硬化症 (ASO)患者では全例術前に冠動脈造影を施行し、肺癌 (LC) 患者では70歳以上または胸痛の既往がある場合では負荷心電図検査を施行した。
【結果】既往に心筋梗塞、狭心症、異型狭心症ある患者は307例 (5.5%) であった。術前IHDが判明した患者は43例であり、AAA、ASO症例では48例中26例 (54%)、LC症例では94例中8例 (8.5%) で新たに判明し、残り9例中7例で問診が発見の契機になり、負荷心筋シンチで判明したのが3例であった。術前に冠血行再建を要したものは13例 (PTCA 12例、CABG : LMT+3VD 1例) であった。一方、冠血行再建の既往を有する症例は206例で、術前新たにPTCAを追加した患者は22例であった。13例はPTCA後の再狭窄で、残りの9例は以前の冠血行再建から5年以上経過し、冠動脈病変の進展が認められた症例であった。周術期心合併症は2例でいずれもST低下を伴う胸痛であった。
【考察】胸痛の既往、高齢者、危険因子重積症例では問診とともに負荷心電図、負荷心筋シンチはIHD術前評価として有用である。動脈硬化進行症例であるAAA、ASO症例は他の報告に較べ高率にIHDを合併し、術前の冠動脈の精査は必須と考えられる。新たにIHDが判明した症例で術前冠血行再建を要する患者は、内膜不安定期のPTCA施行直後の手術を避けること、抗血小板薬の問題からステント留置よりPTCAを選択すべきであり、循環器科と連携が重要である。また以前の冠血行再建から5年以上経過した症例では病変の進展、冠血行再建を考慮する必要がある。
【結語】IHDは動脈硬化の進展と深く関与しており、特にAAA、ASO症例や以前の冠血行再建から5年以上経過した症例ではIHD合併や病変の進展を念頭に置いた術前評価が重要である。