一般演題

セッション:ポスター 15
セッション名:止血・凝固
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:504会議室
演題順序:1番目

on-pump CABGとoff-pump CABGにおける血小板凝集能の変化

北里大学 医学部 麻酔科1
北里大学病院 MEセンター2
○糸満香織1、黒岩 政之1、岡本浩嗣1、沼沢華菜子1、伊藤 修2、増田英理子1、新井正康1、外 須美夫1
【目的】人工心肺を用いた心臓手術では血小板機能が低下するといわれている。そこでin vivoに近い状態で血小板凝集能を測定できるWBA analyzerTMを用いて、on-pump CABGとoff-pump CABGにおける血小板凝集能の変化を比較検討した。
【方法】2002年2月より6月までに当施設で予定された冠動脈バイパス術(CABG)予定患者のうち、同意が得られた患者を対象として経時的に血小板凝集能(全血、37℃、ADPによる二次凝集値を測定)、各血球濃度を測定した。麻酔は観血的動脈圧と肺動脈圧モニター下にプロポフォールとフェンタニルで行い、筋弛緩薬にベクロニウムを投与、セボフルランを補助的に用いた。輸液は乳酸リンゲルを中心に投与し、心係数や肺動脈圧の低下時には代用血漿製剤を20ml/kgを上限として投与した。on-pump CABGはSt. Thomas第2液と同組成の心筋保護液を用い、体温は33℃の軽度低体温下に行った。
【結果】on-pump CABG 7例(on群)、off-pump CABG 8例(off群)を対象とした。平均年齢はon群59.0±7.0才、off群70.8±5.7才、平均手術時間はon群389.3±44.0分でoff群263.8±77.5分だった。血小板凝集係数はon群で手術開始時5.8→終了時16.6と有意に血小板凝集能の低下を示す値が見られたのに対し、off群では低下傾向にとどまった。手術終了時のADP16μMにおける血小板凝集値は、on群61.0±33.6%、off群14.1±18.5%となり群間比較で有意差が認められた。血小板濃度はon群で手術開始時にくらべ終了時に有意な低下が認められた。
【考察】off-pump CABGはon-pump CABGにくらべ麻酔回復時間や術後の神経学的予後、心筋梗塞、不整脈などを改善するとされている。今回の研究ではそれらに加え、血小板凝集能にも影響を与えることがわかった。on-pump CABGの血小板凝集能、粘着能の変化の原因は血液希釈のほか回路や人工肺による血小板の形状変化、抗凝固薬投与による影響、血小板内顆粒濃度の低下などが挙げられている。心筋保護液中に含まれるマグネシウムが血中マグネシウムイオン濃度を上げることによる影響も考えられるが、今後の検討が必要と思われる。