一般演題

セッション:ポスター 16
セッション名:術中・術後管理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:505会議室
演題順序:2番目

上行大動脈瘤による右肺動脈閉塞症例の麻酔管理

山口大学 医学部 麻酔科蘇生科
○入江洋正、石田和慶、大竹一信、三井雅子、長溝大輔、坂部武史
右肺動脈閉塞を伴う上行大動脈瘤に対するBentall手術の麻酔管理を報告する。
【症例】56歳の男性。呼吸困難と喀血がみられ、CT検査で上行大動脈起始部に80×50mmの動脈瘤と右肺動脈の圧迫を認めた。肺血流シンチグラフィーで右肺の欠損像を認め、肺動脈造影では右肺動脈は造影されなかった。また肺動脈圧(PAP)は47/14(平均28)mmHgと高値を示していた。
フェンタニル30μg/kg、ミダゾラム0.08mg/kgとイソフルラン0.5〜1%を併用し麻酔を行なった。動脈瘤が修復され、肺が再潅流したときに肺出血を生じる可能性があるため、ダブルルーメンチューブを用いて必要時に分離肺換気ができるようにした。また右肺動脈のテーピングを行うこと、状況によっては右肺切除もありうることをあらかじめ打ち合わせた。CPB中は無気肺を防ぐために両肺に空気を用いて5cmH2Oの陽圧をかけた。CPBからの離脱時、ドパミン5μg/kg/min、ドブタミン5μg/kg/minを開始した。またPAPの急激な上昇を防ぐため硝酸イソソルビド0.5μg/kg/min、プロスタグランディンE10.01μg/kg/minを投与した。大動脈遮断時間は3時間50分、CPB時間は4時間35分であった。術中、右肺動脈のテーピングは行えなかったが肺出血は生じず、ダブルルーメンチューブのままICUへ収容し、術後3時間で抜管した。術後28日目の肺血流シンチグラフィーで右肺血流は再開が認められた。肺出血、血液ガスの悪化を認めず、術後41日目に退院した。
【考察・まとめ】大動脈瘤が片側の肺動脈を閉塞した症例の麻酔管理のポイントは、(1)有効換気肺が減少している、(2)動脈瘤修復に伴う肺動脈圧迫の解除後再潅流による肺出血、(3)肺高血圧の合併である。(1)に対してはCPB中も両肺に陽圧をかけ、無気肺形成防止に努めた。(2)に関しては、肺動脈閉塞の持続期間と、肺再潅流時の肺出血の危険性については一定の見解はないが、肺出血を念頭に入れた管理が必要で、本症例ではダブルルーメンチューブを用い必要時に肺を分離できるようにした。(3)については特にCPB離脱時の急激なPAPの上昇は肺出血の面からも危険である。硝酸イソソルビドとプロスタグランディンE1の併用で、PAPを術前値以下に維持することが有効であった。