一般演題

セッション:ポスター 13
セッション名:開心術
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:407会議室
演題順序:1番目

感染性心内膜炎に甲状腺機能亢進症を合併した妊娠22週の妊婦に対する僧帽弁形成術の麻酔経験

大阪市立総合医療センター 麻酔科
○中田一夫、高木 治、下野愛子、今中宣依、佐谷 誠
心疾患の既往のない女性が妊娠中に感染性心内膜炎(以後IE)を発症することはきわめて希である.今回われわれは,妊娠中に甲状腺機能亢進症とIEを発症した妊婦に対する僧帽弁形成術の麻酔管理を経験したので報告する.症例:28歳女性,生来健康であったが,2週間以上も発熱が持続したため精査したところ,白血球数,CRPと甲状腺ホルモン値の上昇,心エコー上軽度の僧帽弁閉鎖不全と僧帽弁後尖に直径13mmの球状の疣贅が認められ,動脈血培養からは肺炎球菌が検出されIEと診断された.疣贅は増大傾向で,脳塞栓症の予防目的で緊急手術となった.術中管理:主な問題点としては,胎児と甲状腺機能亢進症が考えられた.胎児に関しては,妊娠22週であり胎児の発育の問題を考慮し,開心術前の帝王切開より妊娠継続とした.甲状腺機能亢進症に対しては,早急な内科的コントロールは不可能であり,対症療法で対処することとした.麻酔管理は循環動態の安定を第一と考え,ドルミカム-大量フェンタニールを用いたmNLAとし,通常のモニターに加えcardiotocogramにより子宮収縮,胎児心拍数を経時的にモニタリングし,子宮収縮予防のためにマグネゾール1g/hrで持続投与を行った.人工心肺(以下CPB)中は,常温,高流量,高灌流圧を維持し,膠質浸透圧と酸素運搬能の維持目的で血液充填を行った.母体は術中,術後を通じて循環動態は安定し,甲状腺クリーゼは生じなかった.胎児に関しては,麻酔導入後より胎児心拍数の基線細変動が消失したが130bpm以上で維持された.CPB開始後血圧が低下し,子宮収縮とともに胎児心拍数が80台へ低下したが,ノルアドレナリンの持続静注による血圧回復とともに徐々に回復し安定した.大動脈遮断解除後より再び子宮収縮が頻回に生じ胎児心拍数が変動したが,マグネゾール,麻酔薬の投与により再び150〜160bpmへ回復した.人工心肺離脱後は降圧のためにミリスロール,頻脈コントロールのためにインデラルの投与を行い胎児心拍数は安定した.ICU入室後,患者の循環動態は安定していた.胎児心拍数も150〜160bpmで安定し子宮収縮も軽度であったが,エコー上胎児の動きは認められなかった.しかし,ICU入室3時間後頃に母体の麻酔からの覚醒とともに胎児心拍が減少消失し胎児死亡が確認された.結果的に救命はできず,反省点とともにIE合併妊婦の麻酔管理の対策について考察し報告する.