一般演題

セッション:ポスター 2
セッション名:体外循環
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:404会議室
演題順序:6番目

成人の開心術における非接触式サーミスタ式鼓膜温測定の有用性

滋賀県立成人病センター 麻酔科
○南 俊孝、大東豊彦、鬼頭幸一、笹井三郎
体外循環施行時など、劇的に体温が変化する場合には、中枢温同士でも温度較差が生じる。より脳温に近い中枢温として咽頭温があるが、ヘパリン化を伴う開心術では鼻咽頭からの出血の危険性がある。鼓膜温も脳温、特に視床下部の温度を反映するとされているが、非接触式の場合は、外頚動脈系に灌流される外耳道温の影響を受ける可能性がある。今回、非接触式サーミスタ式鼓膜温(RSP社製Bi-Temp TM400JTM、以下RSP)が咽頭温の代用となりうるかを検討した。
<対象と方法>外耳道に異常のない73.0±8.9歳の予定開心術6症例(男2、女4)に対し、中枢温として咽頭温(P)・RSP・直腸温(R)をモニタリングし、30℃前後の軽度低体温からの復温時において、各中枢温が復温開始時から5℃上昇するまでの時間、Pが5℃上昇する間のPとRSP、PとRの相関関係(追随性)について比較検討した。
<結果>復温開始から5℃上昇するのに要する時間は、P・RSP・Rでそれぞれ25.8±7.2、31.0±7.1、61.5±11.0分であり、PとRSPでは有意差はなく、Rでは有意に長かった。復温中の相関関係では、PとRSPではR2=0.92、PとRではR2=0.56となり、PとRSPは非常に高い相関関係にあった。
<考察>開心術において、鼻咽頭出血の原因となる咽頭温測定や鼓膜損傷の可能性がある接触式鼓膜温測定は避けるべきであるが、直腸温の測定のみでは復温時の脳温を過小評価し、術中覚醒などを引き起こす危険性がある。RSPは脳温の指標である咽頭温とよく相関し、外頚動脈系の影響も少ないと考えられ、咽頭温の代用として用い直腸温や血液温と組み合わせれば、より精密な体温管理が可能になると考えられる。