一般演題

セッション:ポスター 6
セッション名:脳・神経
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:503会議室
演題順序:2番目

off-pump CABG術中の循環動態と局所脳内酸素飽和度の変化

あかね会 土谷総合病院 麻酔科
○和泉博通、城山和久、中村隆治
off-pump CABGは低侵襲手術として広く行われるようになってきたが,グラフト吻合中は心筋虚血や心臓の挙上・脱転・圧迫等により循環抑制を来たす可能性がある.補助器具や手術方法の改良により吻合中の循環抑制の程度は改善されてきているが,未だ症例によっては麻酔管理に難渋する場合もある.循環管理としては,α刺激薬を第一選択として血圧の維持に努めているが,低血圧や低心拍出量による諸臓器の虚血が懸念される.今回は,off-pump CABG術中の最も循環抑制の大きい回旋枝領域へのグラフト吻合中の循環動態と局所脳内酸素飽和度(rSO2)の変化に関して検討したので報告する.
【対象と方法】回旋枝領域へのoff-pump CABG施行症例13例を対象に,回旋枝吻合直前の循環動態の安定している時点(Pre)と回旋枝吻合中(Cx)の2点で,収縮期血圧(BP),連続心係数STAT(CCI),混合静脈血酸素飽和度(SvO2),rSO2を測定しその変化を検討した.CCIおよびSvO2はBaxter社製Vigilanceを,rSO2はトステック社製のTOS96を使用した.統計処理は,paired-t検定,分散分析,回帰分析を使用しp<0.05を有意差ありとした.
【結果】BP,CCI,SvO2,rSO2はPreに対してCxで有意に減少したが,その減少率は平均23.5%,29.8%,15.9%,4.7%で,rSO2が有意に小さかった.rSO2減少率とBP,CCI,SvO2の減少率との比較では,おのおのの相関係数は0.680,0.661,0.714で,rSO2減少率とSvO2減少率との間で最も強い相関を認めた.また,術後に脳合併症を来した症例は無かった.
【考察】グラフト吻合中は循環動態は抑制され,それに伴いrSO2も減少したがその減少率は循環動態の減少率よりも有意に小さかった.術中管理におけるrSO2の限界値を決定することは困難であるが,他の臓器血流に比して脳血流が優先されて保たれている可能性が示唆された.