ディベート

セッション:ディベート(1)
セッション名:より複雑な小児心臓麻酔管理をめぐって
日時:9月22日 10:00-11:30
場所:国際会議室
演題順序:1番目

低出生体重児PDAの麻酔管理

東京女子医科大学 医学部 麻酔科
○上園晶一
胎生期の動脈管は、出生と同時におこる動脈血酸素分圧の上昇やプロスタグランディン産生低下により、収縮し閉鎖する。ところが、未熟児の場合、それらの刺激に対する動脈管の反応性が悪く、動脈管開存(Patent Ductus Arteriosus, PDA)の状態になることがある。未熟児に多い呼吸窮迫症候群(RDS)による動脈圧酸素分圧の低下も、PDAの成因の一つである。低出生体重児PDA手術の管理で注意する点は、(1)患者の病態、(2)PDA手術、(3)手術場所、の3点に分けて考えるとわかりやすい。
(1) 患者の病態:まず未熟児特有の病態を理解する必要がある。特に問題になるのは、RDSである。PDA手術が必要な患者は、通常、挿管され呼吸管理されている。RDSの状態が悪い場合は、新生児遷延性肺高血圧のため、PDAを介する血流は、右―左シャントとなり、この時点でPDA結紮術が行われることはない。しかし、RDSが改善してくると、肺動脈の圧は低くなり、PDAは左―右シャントに変わる。左―右シャントは、肺血流量の増加をもたらし、肺うっ血の状態になり、RDSを内科的にコントロールすることが出来ないと、PDA手術が必要になる。他の心奇形を伴わない単独PDAは、まずインドメタシンの静注による動脈管閉鎖を試みるので、PDA手術が必要な患者は、インドメタシンに反応しなかった患者、または、インドメタシンが禁忌となる症例(例えば、脳室内出血、壊死性腸炎、腎不全)である。
(2) PDA手術:未熟児のPDAは大きい場合が多く、大動脈と間違えてしまう可能性がある。テストクランプで大動脈でないことを確認することが大切で、下肢に血圧計やパルスオキシメータを必ず装着しておく。
(3) 手術場所:患者の状態が悪い場合は、手術室に移送する事自体が危険である。そのため、PDA手術をNICUで行う施設が多い。麻酔科医にとっては、手術室外での麻酔となるので、道具、機器、人員などの問題が生じる可能性があり、医学以外の面での配慮が必要になる。
推薦教科書:
1.Lake C 編のPediatric cardiac anesthesia は第3版を重ね、この領域では、標準の教科書になっている。
2.Gregory G 編のPediatric Anesthesia の第4版では、先天性心疾患の麻酔の章は、執筆者がLaussen PC に変わり、各論部分がわかりやすくなった。