一般演題

セッション:ポスター 14
セッション名:合併症
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:503会議室
演題順序:1番目

人工心肺離脱前に経食道エコーで診断された肺動脈カテーテルの心房中隔への逢合

大村市立病院心臓血管病センター 麻酔科1
長崎大学医学部麻酔科学教室2
○柴田真吾1、蓮尾 浩1、三好 宏2、澄川耕二2
多くのカテーテル類を使用する心臓血管外科手術症例において、時にそのカテーテルに関する予期せぬ問題が発生することがある。今回、心臓手術の際に人工心肺(CPB)離脱前に肺動脈カテーテル(PAC)を誤って心臓に縫い込んでいることが経食道エコー(TEE)によって発見され、再度心停止を行いカテーテルを抜去した症例を経験したので報告する。症例は71歳女性、心房中隔欠損(ASD)、僧房弁閉鎖不全症の診断を受け、欠損孔閉鎖術および僧房弁置換術が予定された。麻酔導入後、肺動脈カテーテル(PAC)とトリプルルーメンカテーテルを右内頸静脈より留置。人工心肺移行直前にPACを5cmほど引き抜き固定した。大動脈遮断後、右側左房切開下に予定術式が行われた。欠損孔閉鎖は左房側から直接縫合で行われた。左房縫合が終了し大動脈遮断解除後、TEEを観察しつつ心腔内の空気を除去し、CPBよりの離脱準備を行った。離脱直前にTEEによる僧房弁の評価を自己血圧が十分な状態で行い、さらにPACにて肺動脈楔入圧波形の確認を行うためにPACバルーンに空気を注入したところ、TEEにて右房、右室に大量の空気像を観察した。バルーン注入用の注射器は注入状態のままとなり、これを吸引したところ血液が吸引された。バルーンの破損が疑われたが、TEE上の所見からPACの貫通性の縫込みを疑った。そこでPACの可動性の確認を術者とともに行い心房が牽引されることを術野、TEEともに確認し、再度大動脈遮断を行いPACを抜去し、無事人工心肺を離脱した。抜去したPACを観察すると縫合針が貫通した後が確認され、先端のバルーンには破損は認められなかった。
まとめ:カテーテルの縫込みに関する報告は散見するが、術後の抜去困難で発覚するものが多い。バルーンルーメンからの血液の逆流のほとんどはバルーンが破損した場合に起こっている。今回の症例ではTEEの所見によってバルーンの破損を否定し、貫通性の縫込みを指摘することができた。