一般演題

セッション:ポスター 16
セッション名:術中・術後管理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:505会議室
演題順序:1番目

術前検査において心臓超音波検査で診断した三心房の一例

高岡市民病院 麻酔科・集中治療科
○明星康裕
 麻酔管理における麻酔前診察は不可欠であり重要である.当院でも術前診察で胸部X線,心電図および胸部拘扼感などの症状があれば,積極的に心臓超音波検査を施行している.今回,胸部X線写真・心電図検査で心疾患を疑い,心臓超音波検査により三心房心を診断した症例を経験したので報告する.
 症例:69歳,男性.身長155.6 cm,体重62.8 kg.既往歴:特記すべきことなし.嗜好歴:飲酒,喫煙ともなし.現病歴:約2年前より腰痛があった.近医に受診していたが,腰痛が改善せず,当院整形外科を受診した.MRI検査にて椎間板ヘルニアが診断され,手術目的で入院した.腰部脊柱管狭窄症および腰椎椎間板ヘルニアに対し,L4/5両側開窓術とヘルニオトミー,L3/4の左側開窓術が計画された.
 術前診察において,軽度の貧血(Hb 13.4 mg/dl),高血圧(153 / 95 mmHg)がみられた.また,胸部X線検査において軽度心肥大(CTR=55%),心電図検査において四肢誘導の3,aVF誘導に陰性T波があり,1,aVL,V1〜3のST上昇,V5〜6のT波の平坦化がみられた.その他の血液検査や呼吸機能に異常は認められなかった.なお,これまでに胸部症状の既往は一度もなかった.
 心疾患の検索のために心臓超音波検査を試行したところ,左心室の収縮,拡張障害と,三心房様の左房がみられた.また大動脈弁はバルサルバ洞の拡張がみられた.EFは43.1 %であるがCOは5.1 l/minと心機能は良好であった.三心房は探触子の方向を変化させても存在した.肺静脈環流異常はなく,副心房からの流量も少ないため(0.44m/s),左心不全に注意しながら通常の酸素・笑気・セボフルランにて麻酔管理した.術中・術後も問題なく周術期管理できた.
 成人でみられる三心房は無症状のことが多い.注意すべきは,通常,肺静脈の左房開口部周辺部は左房壁との間にひだ状構造物があり,このひだ状構造物が左房内に長くのびると三心房のようにみえる.本症例は探触子を回転させても傾けても異常構造物がみられた.術後も精査は希望されず,退院されたので確定診断は難しいが,三心房であると診断した.術前診察において新しく疾患を発見する機会は多いが,心エコーは非侵襲的で簡便であり,有用な必要な検査と考えられる.