一般演題

セッション:ポスター 9
セッション名:薬理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:403会議室
演題順序:6番目

体外循環に際してヘパリン投与後の活性凝固時間(ACT)の延長異常が認められた2症例

富山医科薬科大学 附属病院 手術部1
富山医科薬科大学 医学部 麻酔科学教室2
○長谷川 和彦1、釈永清志2、朝日丈尚2、山崎光章2
我々は体外循環使用時のヘパリン投与に際し、活性凝固時間(ACT)の延長が不良であった2症例を経験した。これらは、アンチトロンビン3(AT3)を投与することによってACTが適切に延長し、体外循環管理を無事に行う事ができた。
【症例1】70歳女性。高血圧、脳梗塞にて加療中、解離性大動脈瘤(De Bakey1型)を指摘され、当院入院となった。安静及び血圧管理にて加療されていたが、動脈瘤が拡大してきたため、入院35日目に上行大動脈置換術が行われた。体外循環に際しヘパリン14,000u(300u/kg)を用いたがACT365秒と延長不良であり、さらに7,000uを追加したが明らかなACTの延長が得られなかった。 AT3 1,000uを投与したところACT700秒台となり、体外循環を開始した。回路内に凝血等を認めず、プロタミンによる拮抗も通常どおり行え、体外循環を無事終了し得た。
【症例2】73歳男性。背部痛の精査で解離性大動脈瘤(De Bakey3B型)を他院にて指摘され、保存的な治療がなされていたが、偽腔が拡大してきたため14日後当院に転院となった。その2日後人工血管置換術が行われた。体外循環に際しヘパリン19,000u(300u/kg)を用いたがACT340秒と延長不良であり、さらに7,000u、5,000uを追加したが、ACT380秒であった。そこでAT3を1,000u投与したところ440秒に延長したので体外循環を開始し、無事手術を終了した。
【考察】ACTが十分に延長しない原因として、ヘパリンが血管内に投与されていない、活性の低下したヘパリンを使用した、という技術的な問題の他に、ヘパリンの持続投与、AT3欠乏症や軽度の血管内播種性凝固などにより生じるヘパリン抵抗性がある。今回の2例共に発症から長い期間を経ており、凝固線溶系の消費によるヘパリン抵抗性が最も疑われた。症例1の手術6日前のAT3活性は98.0、症例2の手術2日前のAT3活性は84.0であったが、AT3製剤の投与にて術中ACTの延長を認めた事から、数日間において生体内でAT3の消費が生じていたという可能性も考えられる。たとえAT3活性が正常であっても、体外循環の開始前にはヘパリン投与後のACT値を確認すべきであり、その重要性を再認識させられた。