一般演題

セッション:ポスター 10
セッション名:症例
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:404会議室
演題順序:6番目

全身性エリテマトーデスにてステロイド長期大量内服中に発症した急性大動脈解離の1例

横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター 麻酔科
○吉田宗司、岩倉秀雅、藤本啓子
全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病に合併した、外科的治療を要する心血管病変においては組織の脆弱性とそれによる縫合不全、また原疾患の再燃、長期間のステロイド投与による易感染性、耐糖能異常、創傷治癒障害などの合併症の危険をともなう。 今回我々は、全身性エリテマトーデスにてステロイド長期大量内服中に発症した急性大動脈解離の1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
【症例】58歳、女性。身長155cm、体重56kg。
【現病歴】平成14年4月8日、起床時に背部痛を自覚し当センターを受診した。CTにて上行大動脈から総腸骨動脈分岐部に及ぶ急性大動脈解離を認め、同日緊急手術となった。
【既往歴】23歳時に全身性エリテマトーデスの診断を受け、プレドニゾロンを1日15mg、35年間内服中であった。プレドニゾロン総投与量は約190gであった。45歳時より高血圧症にてカルシウムブロッカーを内服していた。
【術中術後経過】麻酔はプロポフォール80mg、フェンタニル100μg、ベクロニウム10mgで導入し、酸素、亜酸化窒素、セボフルレンにプロポフォール、フェンタニルを加えて維持した。術中のステロイドカバーは、当施設で人工心肺症例に通常用いているとおり、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム1000mgを人工心肺開始前に静注した。手術は、弓部小弯側にentryのある大動脈解離で、人工心肺下に上行・部分弓部大動脈人工血管置換が行われた。人工心肺からの離脱は容易であった。出血量は1610gで、術中にMAP 16単位、FFP 12単位、血小板 40単位を輸血した。術後は、第2病日に覚醒を確認、第3病日に抜管、第4病日にICUを退室した。第1病日から第3病日までハイドロコートン200mg静注、第4病日からはプレドニゾロン1日15mgの内服を再開した。術後経過は順調で原疾患の増悪、感染症や創し開などの合併症もなく第31病日に退院した。
【考察】SLEに急性大動脈解離を合併した症例は大変まれで、文献的にもわずか数例を検索しえるのみである。Hussainらの報告では、大動脈基部人工血管置換術と2枝のCABGを施行、術後に肺炎、心不全を合併するも退院にこぎつけている。Guardらによれば突然死したSLE患者の剖検で偶然大動脈解離が発見されている。 長期間ステロイドを服用していた症例では、術中のステロイドカバーが必須であり、手術後にステロイドを再開する時期を慎重に判断することが重要であると考えられた。