一般演題

セッション:ポスター 16
セッション名:術中・術後管理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:505会議室
演題順序:4番目

開心術後縦隔炎に対するcontinuous vacuum drainage法の有用性

昭和大学 医学部 第1外科
○岡田良晴、丸田一人、伊谷野克佳、饗場正宏、道端哲郎、井上恒一、川田忠典、高場利博
【目的】開心術後の縦隔炎は依然として致死率の高い重篤な合併症であり、その治療法も確立されていない。今回、開心術後縦隔炎に対しcontinuous vacuum drainage (CVD)法を使用し良好な結果が得られた2例を経験したので報告する。
【症例1】症例は58才、男性。糖尿病合併症例で両側内胸動脈を使用した5枝CABG後11日目に創部より膿汁が流出し培養にて多剤耐性表皮ブドウ球菌が検出され、14日目に洗浄ドレナージ施行後持続洗浄を行ったが創部が再度離開したため、open drainageを行っていた。培養にて陰性化は得られず37日後に両側大胸筋皮弁による充填術を施行し、この際CVDを行った。ドレーンは胸骨下、皮下、大胸筋剥離部に留置し、J-VACにて持続吸引を行った。留置後10日にて排液の培養が陰性化したためドレーンを抜去した。しかし、皮下に浸出液が貯留したため創部が一部離開をきたしたが自然に閉鎖し、縦隔炎は完全に治癒した。
【症例2】症例は56才、女性。急性大動脈解離に対し上行大動脈置換術後17日目に胸骨上部の皮下に液体貯留を認め穿刺したところ多量の膿汁が採取されたため、直ちに胸骨上部の洗浄ドレナージを行った。術後培養ではMRSAが検出された。20日目に突然shock状態となりUCGにて心タンポナーデを認めたため心嚢ドレナージを行ったところ膿汁を含んだ大量の血液が噴出し、人工血管感染による出血と判断し直ちに手術を行った。肉眼上は人工血管に明らかな感染はなく、出血点も同定できなかったので大網充填術を施行した。この際、胸骨下、皮下にドレーンを留置し、J-VACによる持続吸引を行った。留置後10日以降ドレーンからの排液の培養は陰性化した。しかし、排液量が多いため抜去には28日を要したものの縦隔炎は完全に治癒せしめた。
【結論】CVDは閉鎖された感染巣に対し強圧持続吸引を行うことにより組織のdead spaceを消失させるとともに浸出液の排出も行うことを目的としている。また、ドレーンバックを接続するだけで良く術後の早期離床の面からも有利な面が多いと思われる。今回2例のみの経験ではあったが、CVDは開心術後縦隔炎に対する治療法の一つとして有用であると思われた。