一般演題

セッション:ポスター 14
セッション名:合併症
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:503会議室
演題順序:6番目

オキシドールの使用により左心系の著明な空気塞栓から心停止に至った1症例

手稲渓仁会病院 麻酔科
○朝井裕一、片山勝之、長島 道生、横山 健
今回我々はオキシドールの使用により左心系の著明な空気塞栓から心停止に至った症例を経験したので報告する。症例は62歳、女性。身長146cm、体重44kg。大動脈弁狭窄症、僧房弁狭窄症のために大動脈弁置換術、僧房弁置換術を施行し、手術12日後に縦隔炎による縦隔洗浄・大網充填が予定された。導入時に敗血症性ショック状態であったために導入はケタミン、フェンタニル、臭化ベクロニウムで行い維持は空気・酸素・セボフルラン・フェンタニルで行った。手術中酸素濃度は33%、セボフルランの濃度は0.6−2.0%の間で調節した。手術開始後心機能の評価をするために経食道エコーおよび肺動脈カテーテルを挿入した。経食道エコー挿入後、エコーにてvegetationが見つかり感染性心内膜炎と診断し手術は縦隔を洗浄するのみとなり内科的治療を行う方針となった。胸骨閉鎖後、皮膚の瘻孔をオキシドールで洗浄した直後に著明な心機能の低下を認め経食道エコーにて肺静脈から左心房、左心室に著明な空気を認めた。直後に心電図が変化し心室細動から心停止となった。外科医に依頼しすぐに開胸心マッサージを行い、生理食塩水にてオキシドールを洗い流すことにより肺静脈からの空気は徐々に消失した。閉胸後の突然の出来事でありオキシドールを使用した直後に循環動態に変化が起きたこと、経食道エコーにより左心系に空気が確認されたこと、洗浄により空気は徐々に消失したことからオキシドールによる空気塞栓による心停止と判断した。オキシドールは皮膚科や整形外科など多くの分野で洗浄に使用されることが多いが左心系の空気塞栓を起こす可能性が指摘され使用には注意が必要であると考えられる。