ディベート

セッション:ディベート(2)
セッション名:分離肺換気チューブの選択:私はこうする:右か左か
日時:9月22日 12:30-14:00
場所:国際会議室
演題順序:4番目

ユニベントチューブTMにおける分離肺換気の有用性

東京女子医科大学病院 麻酔科
○横川すみれ、野村 実、長沢千奈美、尾崎 眞
 分離肺換気の手段として、シングルルーメンチューブに気管支ブロッカーが付属したチューブ(ユニベントチューブTM)を用いる方法と、ダブルルーメンチューブ(DLT)[ブロンコキャスTMなど]を用いる方法がある。左開胸手術時にどちらのチューブを選択するかはその症例の術式や麻酔科医の慣れ?によるが、今回はユニベントチューブTMの特徴、特に左開胸手術や長時間の手術および体外循環、大量出血が予想される胸部大動脈瘤手術の麻酔管理における有用性を述べる。
 ユニベントチューブTMはDLTよりチューブの内径が大きいため気管支鏡の使用が容易であり、また太い気管支鏡が使えるので吸引も容易である。血液や分泌物による閉塞が起こりにくい。ブロッカーの深さが調節できるので気管分岐部から上葉支口までの距離が短い症例でも使用可能である。チューブ本体の深さを変えずにブロッカーのみを操作するので、体位変換や手術操作によりブロッカーの位置が変わった場合にも容易に修正できる。DLTとちがって挿管時に気管分岐部に盲目的にチューブを接触させることはないため粘膜損傷が起こりにくい。ブロッカーをチューブ本体に収納した状態ではほぼ普通のシングルルーメンチューブと同等に扱えるので、手術終了時に気管チューブの入れ替えをしないでも術後呼吸管理が可能である。胸部大動脈瘤手術では体外循環時間の延長による浮腫のため胸腹部臓器の重量が増加し内径の細いDLTでは右肺換気で充分な酸素化を行うのが困難になることがある。また内径の細さ故に凝固血による閉塞の可能性も高い。DLTでは手術終了時にシングルルーメンチューブへの入れ替えが必要となるが粘膜浮腫が高度な場合、入れ替えに難渋し危険である。ユニベントチューブTMではブロッカー留置の際右気管支へは容易であるが左気管支へは解剖学的に困難であることが多い。大動脈弓部病変により左主気管支が圧迫されている症例では気管支鏡下でガイドワイアーでの誘導が必要となることもあるが、最近この可動性ブロッカーの材質が改善され、左側への留置も困難ではなくなった。
 ユニベントチューブTMでの麻酔管理は、分離肺換気に慣れていない麻酔科医でも容易であり、もし気道にトラブルがあってもカフの脱気をすれば通常のシングルルーメンチューブとなるため、より精度の高い呼吸管理を必要とするほかのチューブよりもその安全性は高いと考えられる。