パネルディスカッション

セッション:パネルディスカッション(4)
セッション名:開心術と非開心術の重複手術の麻酔管理
日時:9月22日 12:30-14:00
場所:メインホール
演題順序:1番目

腹部大動脈瘤人工血管置換術とCABG術の重複手術における周術期管理の経験

順天堂大学 医学部 麻酔科
○西村欣也、金井優典、田中愛子、園田清次郎、釘宮豊城
 心疾患を有する患者での非心臓手術では通常の心臓手術以上に慎重な周術期管理が要求されるが,心臓手術を同時におこなう重複手術でも様々な制限が生じ管理を行う上で難渋することがある。今回,当院で行われた重複手術に対する周術期管理を中心に検討したので報告する。
【症例】当院では人工心肺を用いた心臓手術は年に約280例であるが,このうちCABG症例は平均120例/年 (約43%)である。また1996年〜2001年の6年間に腹部大動脈瘤(AAA)を合併した症例は11例で,うち3例に対してCABG術および人工血管置換術が同時に施行された(combined群)。なお,combined群のAAA径はいずれも70mmを越えていたが,重複手術をしなかった8例(non-combined群)のAAA径はいずれも60mm以下であった。
【結果と考察】combined群では手術時間が51分間長くなるものの,ICU滞在日数:3.3日と通常のCABG術群やnon-combined群と差はなかった。また血管作動薬・カテコラミン量や術後出血量にも差は見られなかった。一方non-combined群であるが,Ejection Fraction:EF低下(2例)や,75才以上高齢者(4例),人工血管置換術施行済み(1例),高度肥満(1例)などを理由に重複手術は行わず,CABG術のみの施行となった。
 このようにcombined群は順調に経過したが,平均年齢が58才と若く,また術前の心機能も比較的良好であった。一般に人工血管置換術では大動脈遮断における大動脈インピダンス上昇によるEF低下,心拍出量低下により虚血が誘因されやすい。今までに報告された論文ではCABG後の人工血管置換術の重複手術の安全性が報告されているが,周術期管理を担当する上では,社会的要因も含めて慎重な症例選択が求められるものと思われる。