一般演題

セッション:ポスター 15
セッション名:止血・凝固
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:504会議室
演題順序:6番目

深部静脈血栓症(DVT)に対する一時的下大静脈フィルターANTHEORTMの使用経験

奈良県立医科大学麻酔科学教室
○岩田正人、謝 慶一、瓦口至孝、北口勝康、平井勝治、古家 仁
近年,深部静脈血栓(deep vein thrombosis,以下DVT)を有する患者がわが国においても増加しており、それに続発する肺梗塞の頻度も上昇している。したがってDVTが疑われる患者に対して、重篤な周術期の肺梗塞を予防する必要があり、一時的下大静脈フィルター(以下TF)は有効な手段とされている。今回我々はDVTが強く疑われた3名の患者に対し、Boston社製のTFであるANTHEORTMの使用を経験した。症例1は50歳男性、下腿皮膚潰瘍にてデブリ−ドマン、植皮術が予定された。術前の下肢静脈造影にて左大腿静脈に部分的な血栓性閉塞像が認められ、さらに下肢エコ−にてDVTを認め、D-dimer test が高値を示したため周術期の肺梗塞の危険性を考慮しTFが挿入された。症例2は26歳女性、帝王切開術が予定された。前回の初回分娩後DVTの既往があり、その後アスピリン100mg/dayの経口投与を続けていた。術前下肢エコ−にて総腸骨および大腿静脈壁に血栓が認められたため、局所麻酔下にTFを挿入し、全身麻酔下にて帝王切開術を行った。症例1,2とも術中および術後に1日あたり1万単位のヘパリンにて抗凝固療法を施行、2週間後の検査で血栓に変化を認めなかったためTFを抜去した。症例3は44歳女性、ミトコンドリア脳筋症と腎不全にて人工透析をうけていた。下肢痛が出現し下肢エコ−にて大腿静脈に血栓性閉塞を認め血栓性静脈炎と診断された。抗凝固療法および線溶療法施行のためTFが挿入された。2週間後の検査で血栓に変化を認めなかったためTFを抜去した。いずれの症例もTFはX線透視下に挿入し、腎静脈分岐部直下に留置するため第2腰椎付近にフィルタ−を固定した。TFは3例とも肘静脈より挿入した。また、いずれの症例もTF挿入中にカテ−テル感染による熱発は認められなかった。ANTHEORTMは有効長が85cmと長く肘静脈よりの挿入が可能である。DVTに対するTFは約2週間程度挿入しておく必要性があるため、留置による患者負担やカテ−テル感染、穿刺による合併症を考慮した場合、肘静脈からの挿入が有利であると考えられる。ANTHEORは長期留置時に構造上の特性からフィルター部分の偏位がなく、血栓捕捉力の低下も少ないと考えられた。