一般演題

セッション:ポスター 7
セッション名:CABG
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:504会議室
演題順序:3番目

冠動脈バイパス術におけるMECCの有用性

長崎大学 医学部 麻酔科1
長崎大学 医学部附属病院 手術部2
○山口昌一1、押渕素子1、山口美知子1、三好 宏2、油布克己2、趙 成三2、原 哲也1、澄川耕二1
【目的】冠動脈バイパス術 (CABG) において、体外循環に由来する種々の副作用を避けるための手術法として、心拍動下に体外循環を使用しない手術法 (off-pump CABG) があるが、高度な冠動脈疾患に対するoff-pump CABGの適応は限られている。MECC (minimum extra-corporeal circulation) は経皮的心肺補助装置 (PCPS) 回路に小型レザバーを組み込んだ体外循環回路である。従来の人工心肺装置による体外循環 (conventional extra-corporeal circulation: CECC) と比較し、回路内充填量が少ないため血液希釈の影響は少なく、ヘパリンコーティングの回路を用いるため、抗凝固のためのヘパリンの必要量も少ない。また、体外循環によって惹起される酸化ストレスおよび炎症反応が軽減され、臓器機能に与える影響が少ないと予想される。反面、レザバーが小さい、術野出血の吸引による体外循環回路への回収ができないなどの欠点がある。今回、CBAG におけるMECCの有用性をレトロスペクティブに検討した。
【方法】MECCを用いてCABGを行った10例(MECC群)を、CECCを用いたCABG 10例(CECC群)とレトロスペクティブに比較し、麻酔薬の投与量、輸血量、ヘパリンの投与量、体温、体外循環の離脱に要するカテコラミン量、術後臓器機能などを検討した。
【結果】両群間で、年齢、身長、体重、術前のヘモグロビン値および心機能、手術時間および麻酔時間に有意な差はなかった。術中に使用したフェンタニルおよびヘパリンの投与量はMECC群で有意に少なかった。体外循環中および離脱時の最低直腸温はMECC群で有意に高かった。輸血量、体外循環の離脱に要するカテコラミン投与量および術後臓器機能に有意な差はなかった。MECCが原因と考えられる合併症はなかった。
【結論】CABGにおいてMECCは患者を安全に管理できる体外循環であり、血液希釈にともなう麻酔薬の血中濃度低下を軽減できる可能性がある。MECCが輸血量の削減および術後臓器機能の改善などに与えるに影響に関しては、今後さらなる検討が必要である。