一般演題

セッション:ポスター 11
セッション名:経食道心エコー
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:405会議室
演題順序:6番目

肺塞栓症のため持続ヘパリン、IVCfilter留置中に経食道エコーで発見された右房内の血栓症の一例

横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター集中治療部1
横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター麻酔科2
○後藤正美1、藤本 啓子2
経食道心エコー(以下TEE)は経胸壁心エコーでは診断しにくい病変の描出ができる。肺梗塞の患者でIVCfilterを挿入後にもかかわらず、右房内に血栓がみられた症例を報告する。患者は27才女性。子宮筋腫で婦人科フォロー中であった。5月27日妊娠2ヶ月で鼠径部に痛みを感じ、左右深部静脈血栓症が疑われた。6月4日妊娠3ヶ月で症状が増悪し、弾性包帯着用、妊娠中絶する方針となり入院した。CTで左右総腸骨内腸骨静脈および左外腸骨静脈から大腿静脈に血栓が発見された。6月10日トイレからの帰室時、意識消失発作があった。1分ほどで意識は回復したが、肺塞栓症を疑いヘパリンを1万単位投与し、緊急カテーテル検査を行った。肺動脈造影では左下葉枝に欠損像があり、肺塞栓症と診断し、右肘静脈からtemporary IVC filter を留置した。肺塞栓症の原因は巨大子宮筋腫による静脈系の機械的圧迫と妊娠による凝固能亢進状態が関与していると判断し、6月13日妊娠中絶手術施行することとなった。術前よりヘパリンを持続投与してAPTTを60前後にコントロールしていた。子宮内用除去術時のTEE所見は右房内に約2cmの高輝度エコーの浮遊物が観察され、filter周囲のまたは右房壁に付着した血栓と考えられた。7月14日子宮筋腫核出術施行。術前にfilter の交換が行われた。子宮筋腫核出術時のTEE所見も前回と同様の部位に高輝度の浮遊物があり、エコーあり。大きさはほぼ同様であった。その後もヘパリンによる抗凝固は続け、7月28日下大静脈造影で明らかな血栓はなくfilterを抜去した。この間、肺塞栓を疑わせる症状はなかった。いずれの場合も経胸壁心エコーでは血栓は発見できなかった。TEEは上大静脈もしくは右房の血栓の診断に有用であった。肺塞栓症の予防のためのtemporary IVC filter を用いても血栓が付着し、新たな肺塞栓の原因となる事も考えられ、慎重な対応が必要である。