一般演題

セッション:ポスター 1
セッション名:モニタリング
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:403会議室
演題順序:2番目

経食道超音波ドップラーシステムによる周術期の血行動態測定

獨協医科大学 集中治療室
○神津成紀、林 堅二、小野 哲、半沢晋二、高橋宏行、本間康浩、崎尾秀彰
腹部巨大腫瘍摘出術では、手術体位や腫瘍操作によって、麻酔中の循環動態や呼吸状態が大きく変動する。今回我々は、非侵襲的に血行動態を連続測定可能なモニタ、HemoSonic100TMを用いて、巨大腎腫瘍摘出術における周術期の循環動態への影響を検討した。症例は22歳の男性で、平成14年4月下旬より食思不振が出現し、腹部膨満感も増強してきた。自宅安静にて改善傾向がみられないため、5月14日に近医を受診し、腹部CT、血液検査にて腹部巨大腫瘍と腎機能低下を指摘された。翌日、当院泌尿器科に紹介され、手術目的に入院となった。入院後の精査にて両側の多発性腎嚢胞と診断し、6月3日に両腎摘出術が予定された。麻酔導入はサイアミラル,フェンタニル,ベクロニウムにて行い、気管挿管した。術中麻酔維持は酸素,亜酸化窒素,セボフルランにて行い、フェンタニル,ベクロニウムを適宜投与した。開腹後、腫瘍による腹部血管の圧迫解除に伴い血圧の急激な低下が起こり、同時に心拍出量および大動脈血流量の低下が確認されたため、輸液負荷およびカテコラミン投与にて対処した。また、腫瘍摘出時も大量出血による同様の結果が得られ、輸液負荷および輸血投与にて循環動態を維持した。摘出した左腎は重さ3.500g、迅速病理にて良性であった。術式は腎機能温存のため片腎のみの摘出に縮小された。手術終了時、術中の大量出血によると推察される心拍出量および大動脈血流量の低下が続いたため、集中治療室入室後も腎血流、尿量維持に経食道超音波ドップラーシステムの経時的推移にあわせて輸液、輸血による補充を行い、良好な循環動態の管理をすることができた。
【結語】経食道超音波ドップラーシステムは、心拍出量および大動脈血流量の連続測定を可能にし、急激な循環動態の変化を迅速に把握し、輸液管理することができる。また肺動脈カテーテルと比べ低侵襲である。本症例のように血行動態の変動が大きく、腎機能低下による厳重な腎血流維持を必要とする周術期管理では非常に有用であった。しかし、体位変換によりプローベの位置が移動し易く、誤測定の危険性があるという欠点も有していた。過去の自験例と文献的考察を加えて報告する。