一般演題

セッション:ポスター 9
セッション名:薬理
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:403会議室
演題順序:3番目

アミオダロン内服患者の全身麻酔中、異常高血圧を呈した一症例

大村市立病院 心臓血管病センター 麻酔科1
長崎大学 医学部 麻酔学教室2
○蓮尾 浩1、柴田真吾1、澄川耕二2
アミオダロンは難治性の致死的不整脈に対して用いられるクラス3群抗不整脈薬であるが、副作用として徐脈、心筋抑制、低血圧などが挙げられ、内服患者に対する麻酔管理においては循環動態への影響を無視できない。今回、我々はアミオダロン内服患者の喉頭微細手術に際して全身麻酔を行い異常な循環動態を呈した症例を経験したので報告する。
症例は59歳男性。当院循環器内科で難治性心室頻拍と肥大型心筋症の診断で内服加療中であった。最近、嗄声を自覚し耳鼻科紹介され声帯ポリープの診断で喉頭微細手術が予定された。現在の内服は、アミオダロン、エナラプリル、ビソプロロールでこの処方になって心室頻拍は出現していなかった。術前検査では、心電図でVPCを認めたが単発単源性で、ホルター心電図でも二連発をわずかに認めるものの3連発以上は認めなかった。心エコーでは心尖部が瘤状を呈して壁運動低下を認めるが他の領域は壁運動正常で駆出率は77%と保たれていた。胸写では心拡大を認めた。麻酔は、プロポフォール、フェンタニルで導入し、セボフルランで維持した。導入前に観血的動脈圧ラインを確保し術中モニタリングを行った。麻酔導入から術中はやや徐脈傾向であったが、血圧、心拍数ともに安定していた。心電図上VPCを認めたが単発性であり特に処置は行わなかった。手術終了後、吸入麻酔薬を中止したところ一気に血圧が250/120mmHgに上昇し心拍数も100bpmまで増加した。ニカルジピン、プロプラノロールを用いて降圧を行い約10分後、血圧190/100mmHg心拍数80bpmとなった。血圧上昇時からSpO2の低下を認め、動脈血液ガスではFiO2 1.0でPaO2 76.7mmHgと酸素化不良を認めた。気管内には多量の泡沫状分泌物が出現し急性肺水腫が疑われた。吸入麻酔薬を再開して鎮静を行ったところ血圧、心拍数は安定しFiO2 0.5でSpO2も98〜99%を維持した。プロプラノロールで血圧上昇を抑えながら吸入麻酔を再度中止したが、前回のような高血圧をきたすことなく良好な覚醒状態を得られたので抜管しICUへ搬送した。ICUでは呼吸、循環ともに安定し第1病日には一般病棟に退室できた。
今回の麻酔中のイベントと患者の心疾患やその治療との因果関係は確定できないが、アミオダロンと麻酔および麻酔中の急性肺水腫について文献的考察を加え報告する。