一般演題

セッション:ポスター 2
セッション名:体外循環
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:404会議室
演題順序:3番目

体外循環に伴うANP,BNP,CGRPの変動

岐阜大学 医学部 集中治療部1
岐阜県立岐阜病院麻酔科2
○寺澤悦司1、赤松 繁1、下中浩之2、土肥修司1
心臓外科手術では体外循環など循環動態の急変は体液のバランス,内分泌・自律神経系等のホメオスターシスの異常が生じることはよく知られている.体液,内分泌・自律神経系の維持は麻酔中管理上重要である. ANP,BNP, CGRPが患者の身体評価により,人工心肺の影響が異なるかを検討した.
【対象及び方法】体外循環下に冠動脈バイパス術が予定された患者27名を対象とした.患者の身体評価はそれぞれの麻酔を担当する指導医により決定され,ASAIIと評価されたものは10名,ASAIII&IVと評価されたものは17名であった.麻酔方法はフェンタネスト-酸素-空気にて麻酔を行った.使用したフェンタネストは麻酔導入に20μg/kg,胸骨切開までに30μg/kg,人工心肺開始までに50-70μg/kg投与し,人工心肺離脱後はイソフルレンで管理を行った.気管内挿管の後Swan-Ganzカテーテル,中心静脈カテーテルの挿入を行った.手術中以下のポイントでANP,BNP,CGRP,カテコラミン及びADH測定の為の採血を行った.1.麻酔導入前,2.麻酔導入後3.人工心肺開始前4.人工心肺開始直後,大動脈遮断前5.大動脈遮断30分後,6大動脈遮断60分後,7.人工心肺離脱直前8.人工心肺離脱30分後,9.人工心肺離脱60分後に行った.
【結果】ASAIIの患者の麻酔導入前のANP, BNPは,ASAIII&IVの患者に比べ有意に低値を示した.(ANP 26pg/ml, 83pg/ml, BNP 14pg/ml, 139pg/ml:median). ASAIIとASAIII&IVの間にはNYHA分類,LVEDPの値に差を認めた.BNPは両群共に人工心肺離脱後術前値に近い値に戻ったが,ASAIIのANPは心肺離脱後,ASAIII&IVの患者の値に近い値(100pg/ml)に上昇した.CGRPの値は両群全てのポイントに差がなく,人工心肺開始に伴い約10倍に上昇し,人工心肺離脱後低下した.カテコラミン値やADHの値には両群間に差を認めなかった.CGRP, ANP,BNPの値と血行動態の値には相関を認めなかった.CGRPの値と平均血圧の動きは相反したが,平均血圧の変化率とヘマトクリットの変化率には相関を認めたが,平均血圧の変化率とCGRPの変化率には相関を認めなかった.
【まとめ】人工心肺開始による循環血液量の急激な変化に伴って,ANP,BNP,CGRPは著明な変動を示した.BNPが心機能の悪い患者により上昇していたことは,心機能の評価に有用であると思われた.