一般演題

セッション:ポスター 13
セッション名:開心術
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:407会議室
演題順序:4番目

左室縮小手術5例の麻酔経験

京都大学 医学部 附属病院 麻酔科
○重光麻紀子、一澤 敦、嵯峨慶子、古谷秀勝、石井久成、七野 力、福田和彦
はじめに:左室縮小手術には左室側壁を乳頭筋間で切除し縫縮する術式(バチスタ手術)と心室中隔と左室前壁を含む心室壁をより面積の小さい心室内パッチに縫合する術式(SAVE手術(Septal anterior ventricular exclusion))がある。我々は、左室縮小手術の麻酔管理を5例経験したので報告する。
症例:原疾患は特発性または続発性拡張型心筋症で、1例の小児例の他は成人例であり、3例でバチスタ手術、2例でSAVE手術が施行された。バチスタ手術では3例とも僧帽弁形成術(アルフィエリ法)を同時施行した。SAVE手術の1例では僧帽弁再置換術、もう1例ではCABGを同時施行した。3例では心室壁切除前に体外循環下に心拍動下容量減少試験を行い、経食道心エコー(TEE)で切除範囲を決定した。手術時間は最短215分、最長480分、出血量は最小155g、最大370gであった。麻酔導入は全例フェンタニルおよびミダゾラムで行い、循環動態に大きな変動は来さなかった。麻酔維持はフェンタニルとプロポフォルで行った。全例肺動脈カテーテルを留置しTEEを使用した。2例では人工心肺前からカテコラミン投与を必要とし、1例では術前から大動脈内バルーンポンプ(IABP)を必要とした。全例で人工心肺前から手術終了までPDEIII阻害薬を持続投与した。人工心肺時間は76分から186分で、人工心肺からの離脱は1例では容易であったが、他の4例ではIABPを必要とし、1例ではさらに経皮的心肺補助(PCPS)が必要であった。PCPSを要した症例は術後68日目に死亡したが、他の4例は症状が改善し、退院または転院し生存中である。
考察:拡張型心筋症による重症心不全に対する左室縮小手術の管理では術前のカテコラミン減量、人工心肺前からのPDEIII阻害薬投与が有用と思われた。人工心肺離脱時にはIABPやカテコラミンによる心収縮力のサポートと血管拡張薬による後負荷の軽減、適切な前負荷が重要である。しかしながら、CABGを同時施行した例のように冠動脈病変を有する症例では拡張期圧を十分保つことも重要で、後負荷をどのくらいに保つべきかは議論の余地がある。経食道心エコーは切除範囲の決定や前負荷の調節に必須である。