一般演題

セッション:ポスター 3
セッション名:大血管手術
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:405会議室
演題順序:1番目

腹部大動脈人工血管置換術患者の周術期合併症− 定期手術50例と緊急手術20例との比較−

佐賀医科大学 医学部 麻酔・蘇生学1
佐賀医科大学付属病院手術部2
○三溝慎次1、中島幹夫2、十時忠秀1
腹部大動脈瘤は動脈硬化を基礎疾患に持ち、冠動脈病変だけではなく腎動脈や腸間膜動脈などにも狭窄病変を持つ可能性も高く、周術期合併症が多く報告されている。また、腹部大動脈瘤破裂症例においての緊急の腹部大動脈人工血管置換術では術前血圧が低下している症例も多く全身状態が悪化し、周術期の合併症は定例手術に比し増加すると考えられる。今回我々は待機的腹部大動脈人工血管置換術と緊急の腹部大動脈瘤破裂症例における腹部大動脈人工血管置換術の周術期合併症をレトロスペクティブに調査した。
【症例】待機的手術症例1998年1月から2000年12月において佐賀医科大学付属病院手術部にて待機的に腹部大動脈人工血管置換術を行われた50症例の周術期合併症を調査した。年齢は53〜90歳で、術前検査での負荷心筋シンチにて虚血が疑われたのは50症例中30(60.%)で、そのうち22症例に対して冠動脈造影を行い、18症例にて冠動脈狭窄が認められた。しかし、麻酔中に心筋虚血によると考えられる重篤な不整脈や心停止などの合併症を認めた症例はなかった。他の合併症としては腎不全となった症例が1症例、虚血性腸炎にて死亡した症例が2症例認められた。緊急手術症例1995年1月から2001年12月において佐賀医科大学付属病院にて腹部大動脈瘤破裂と診断され、緊急に腹部大動脈人工血管置換術を行われた20症例の周術期合併症を調査した。年齢は63〜85歳で、初発症状としては腹痛、腰痛が多く、佐賀医科大学付属病院に搬入時に血圧が低下していた症例は14症例であった。そのうち外来にて挿管された症例が4症例であった。ほとんどの症例が麻酔中に大量輸血を必要としたものの、重篤な不整脈や心停止などの合併症を認めた症例はなかった。しかし、腎不全となった症例が3症例、虚血性腸炎にて死亡退院した症例が4症例、肝機能障害、心筋梗塞にて死亡した症例が1症例認められた。
【結語】待機的腹部大動脈瘤人工血管置換術と緊急の腹部大動脈瘤破裂症例における腹部大動脈人工血管置換術の周術期合併症をレトロスペクティブに調査した。死亡症例としては虚血性腸炎によるものが緊急手術症例で待機的手術症例の5倍と多く認められ、腎不全となった症例も緊急手術症例で多く認められ、また、緊急手術症例では肝機能障害、心筋梗塞にて死亡した症例が1症例認められた。