一般演題

セッション:ポスター 8
セッション名:プロポフォール・ミダゾラム
日時:9月21日 16:10-17:10
場所:505会議室
演題順序:6番目

プロポフォール・フェンタニルを用いた超低体温下大血管手術中のBispectral Index(BIS)の変化

山口大学 医学部 麻酔科蘇生科
○大竹一信、三井雅子、入江洋正、長溝 大輔、中村真之、石田和慶、森本康裕、坂部武史
 BISは、心臓・大血管手術において術中覚醒の防止や中枢神経系のモニタとして期待されている。BISは低体温によっても影響を受けるが、超低体温を用いた手術中の変化については不明な点が多い。プロポフォール(P)・フェンタニル(F)を用いた超低体温下胸部大血管手術中のBISの変化を検討した。
【対象と方法】胸部大動脈瘤手術6例 (上行置換3例、弓部置換2例、上行・弓部置換1例)を対象とした(緊急手術3 例)。手術室入室後BISモニタ(A-1050)を開始した。P 0.5 mg/kgボーラス投与後に8 mg/kg/hとし、F 10μg/kgを投与した。気管挿管後 P 2-4 mg/kg/hで維持した。脳温の代用として内頚静脈球部温(球部温)の測定を行った。胸骨切開までに F を20μg/kg追加投与した。上行置換3例は逆行性脳灌流(RCP)、弓部置換3例は脳分離循環(SCP)で脳循環を維持した。循環停止は膀胱温がRCPで20℃以下、SCPでは24℃以下に到達してから行った。冷却中 P を2 mg/kg/hで維持し、復温してBISが 40以上に回復したらBIS 40-60を目標に 2-4 mg/kg/hで調節した。P を 4mg/kg/hで投与してもBIS 60 以上が持続するときは適宜 F を追加投与した。
【結果】年齢は70±5歳(平均±標準偏差)、体重は62±15 kg、男:女=5:1であった。手術時間は608±229分、人工心肺(CPB)時間は254±41分(RCP 59±8分、SCP 152±44分)。P 総使用量は2515±1486 mgであった。4例でCPB後 F の追加投与を必要とし、F の総投与量は37±5μg/kgであった。BISは導入前の95±3から導入後58±6に低下し、冷却開始とともに低下し、一度上昇して再度低下する現象が全例で認められた。脳灌流中(最低内頚静脈球部温18±2.1℃)は全例平坦脳波となり、BISは0となった。復温時、球部温が36℃に到達してからBISが40以上となるのに55±44分を要した。1例でBIS回復の著明な延長(116分)を認め、もう1例では手術終了時までBIS低値(36)が続き、術後中枢神経障害(左手指運動障害)を認めた。
【考察・まとめ】心臓手術において体温低下に伴いBISが低下することが報告されている。今回の検討でも冷却開始とともにBISの低下を認めた。術後中枢神経障害を認めた症例では復温後のBISの回復が遅く、手術終了時まで低値が続いた。復温後のBISの回復遅延や持続する低値は中枢神経障害の発生を示唆している可能性がある。