一般演題

セッション:ポスター 14
セッション名:合併症
日時:9月22日 15:40-16:40
場所:503会議室
演題順序:4番目

硫酸プロタミンが原因でVFが発症したと思われる1症例

岩手医科大学 附属循環器医療センター 麻酔科1
八戸赤十字病院 麻酔科2
岩手医科大学 医学部 麻酔科3
○奈良範子1、川村隆枝1、門崎 衛1、秋山潤根2、阿部光二3、盛 直久3
【はじめに】 心臓手術において、人工心肺(CPB)からの離脱時に、へパリンの中和剤としてプロタミンが使用される。今回我々は、通常量のプロタミンが原因で、VT、VFを起こしたと思われる症例を経験したので報告する。
【症例】66才男性、身長172cm、体重62kg 診断名はAR,(AR 2度、NYHA2) 予定術式はAVPであった。既往歴に特記事項なし。血液検査データーにも特に異常値はみられなかった。
【麻酔管理】麻酔導入は少量のミダゾラム、フェンタニ−ルで行い、麻酔維持はフェンタニ−ル、プロポフォールと、適宜吸入麻酔剤を使用した。麻酔導入から人工心肺までで特記すべきエピソードはなかった。人工心肺時間は2時間12分、大動脈遮断時間は1時間45分であった。大動脈解除10分後、人工心肺からの離脱は完了した。循環動態が安定しているのを確認した後、倍量希釈のプロタミンを、末梢ラインから開始した。開始後PVCが出現し始め、5分後にはVTからVFに移行し、再度人工心肺管理となった。DC施行後、フェンタニ−ルと静注用2%キシロカインを追加した。原因を究明できないまま、20分後、循環動態が安定している事と、不整脈の出現をみない事を確認した後、再度人工心肺からの離脱を開始。スムーズに離脱可能だったため、プロタミンを開始した。開始直後よりPVCが出現したため、一時中断した。中止して5分後からは、まったく不整脈の出現をみなくなったため、そのままプロタミンの使用は中止し、へパリンの効果が切れるのを待った。その後、術中に不整脈は見られなかった。手術時間は7時間50分、麻酔時間は8時間50分、総出血量は1585mlであった。術後、集中治療室でも重篤な不整脈の出現はなく、6時間後に抜管した。
【考察】プロタミンの副作用として、血圧下降、徐脈が知られているが、重篤な不整脈の出現については、あまり報告がない。しかし、今回の不整脈の出現はプロタミン開始直後であること。再現性があること。プロタミン中止で劇的に不整脈の出現がなくなったことからVT、VFの原因としてプロタミンの関与が強く考えられた。